Dream
□確実に息を殺す、方法は、
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金曜日の夜。帰宅ラッシュの電車はもちろんすし詰め状態。ぎゅうぎゅうの車内では人との密着度は…ハンパない。
「にしても、くっ付きすぎですよ…」
「ん?何のこと?」
買い物袋をたくさん肩に掛けた臨也。たくさんの人の中、私を器用に引き寄せて…と言うより私を器用に向かい合わせで抱きしめている。
「痴漢にでもあったら大変でしょ」
「そうだけど…」
後ろは壁、前は臨也。
華奢だけどしっかりした臨也の胸からは鼓動が伝わる。少し顔を上げると目が合った。絡められる視線。無駄に整った顔に笑みが浮かび、不覚にも心臓が高鳴る。熱が集まる顔を見られたくなくてうつむくけど、密着してるから無駄だった。
「恥ずかしい?」
「ん…当たり前じゃん」
私の耳元に顔を落としささやくように話す臨也。耳に注ぎ込まれる吐息と声に、抵抗するすべはない。
「臨也、あんま近くで話さないでよ…」
「名無しさん、」
って、何このカップルみたいなムード。いや、実際そうなのだけど。
これが噂のバカップルか、とわたわたと1人で盛り上がる。すると、突然私の足に人肌が触れた。
「(……や、だ…本当に、痴漢?)」
そうじゃない、そんなんじゃない。
そう思いたいけれど、スルスルと私の股を上へ上へと上ってくる手。どうして、今日に限って滅多にはかないミニスカートなんかはいてきてしまったのか。
「あっ…」
撫で回されている足のせいで、自然と発せられる言葉。
これは、本当に、まずい。
うっすらと涙が浮かぶ目で、臨也に助けを求めようと顔を上げた。
「臨、也…!んっ…」
上げた、と同時に唇に臨也の唇が重ねられる。止めて、そう言おうと薄く開いた口から舌が侵入してくる。他人からは死角にはなっているからか、角度を変えはしないものの濃厚に舌を絡めてくる。
「…っは…い、ざや…」
少しの水音と漏れる吐息。
それに合わせるように撫で回される足。手はすでに下着にかかろうとしている。
「(まさか…臨也、が…)」
クラクラと快感に酔う自分に思考が着いていかない。
軽いリップ音がして唇が離された。
「こう言うのも、たまにはいいんじゃない?」
「ちょ…だめ、だって…!」
「ほら、声、聞こえる」
臨也は細長い指で下着の上から割れ目をなぞっている。
どこまでも余裕なこの男に、私は、
「楽しもうよ、」
「っあ…!」
わたしはまた、よいしれる。
確実に息を殺す、方法は、
(声出せば?)(や…だ)(嘘、こんなに濡れてるのに)