Dream
□nearby
1ページ/1ページ
幼なじみって近いようで遠い存在。
私はそう思う。
「また、告白されたの?」
日が傾いてきた、冬のグラウンド。いつものように並んで歩くのは、幼なじみの私たちにとっては当たり前の光景で。
こんな会話もしょっちゅうで。
「相変わらずの情報屋なのな…」
「花から聞いただけだよ」
この野球バカが告白された、なんて日常茶飯事の話。
でも武は絶対に私にこのことを言わない。何でかは分からない。別に私には関係のない話。特に聞く必要もないわけで。
「…誰?」
「え?」
「……ううん、別に」
誰、なんて聞いてどうするんだろう。
そう言えば、相手を気にしたのなんて初めてかもしれない。
「1年の、後輩」
「…うん」
「…でも、好きなやつがいるからって断った」
「そう、なんだ。…初めて聞いたよ」
好きなやつがいるからって断った。
初めて聞いた。好きな人がいるなんて。
「(ま…当たり前だよね)」
小さい頃から一緒にいた。お泊まりだってしたことはあるし、一緒に出かけるのもしょっちゅうだし。
だから、結構私は武に何でも話していた。武も私にいろんな事を話してくれた。
それでも、やっぱり知らないことはあるわけで。
今日は何だか、言葉が出てこない。
「…」
「…」
「…嬉しいのな」
「…?」
「名無しさんが俺に告白してきた子のこと聞いてくれて」
沈黙を遮ったのは武。
「別に、深い意味は」
「俺が、」
また、沈黙。
ピタリと立ち止まった武。
数歩前で立ち止まった私は後ろの武を振り返った。
いつになく真面目な表情なのに、少し笑っていて。
こんな顔、見たことなくて胸が少し大きく脈打つ。
「…俺がずっと好きなのは、名無しさんだ」
サアッと吹いていく北風。
まだ残っていた落ち葉が風に運ばれカサカサ音をたてている。
「……武のこと、そういう風に見たことない」
「だよ、な…」
クシャッと落ち葉を踏んで、また前を向いて歩き始める。
武はまだ、立ち止まったままみたいだ。
「(本当に)」
本当に、そうなのだろうか。
見なかったようにしてただけではないのか。
側にいるだけで、幼なじみなだけで、私はそれ以上の事なんて無いって決めつけていたのではないか。
本当は、武と同じように、私も…。
「…私も、」
数メートル後ろを振り返る。
先ほどの表情のまま、武はまだ動かずにいた。
「……武のこと…好きになってもいい?」
この関係は、きっとずっと続く気がする。
明日も明後日も、来年も再来年も、数十年経っても、ずっと。
とびきりの笑顔で武は、当たり前なのなっ!って抱きついてきた。
「好きだ」
「ん…たぶん、私も?」
「ハハッ!なんだそれ!」
私は、たぶん、ずっとずっとずっと、好きでいられるよね。
nearby
(いつから?)
(ん?)
(いつから……好きだった?)
(んー…と、幼稚園の時か?)
(…一途すぎでしょ…)
((本当は、嬉しかったり))