池袋物語
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そもそも、日常と非日常の境目はどこだろうか。毎日毎日繰り返される同じような日々を日常と呼ぶのなら、どのようなものを非日常と呼ぶべきなのだろう。
まあ、とにかく。
その境目がどこにあるにせよ、今置かれている状況は確実に非日常の方である。
「…離してやれよ」
「あぁ、何だてめぇ」
本を返しに行こうとした、ただそれだけなのに。
捕まれている腕が痛いことから夢じゃないことは確か。しかし、これは本当に、
「平和島、静雄…」
夢でないのだろうか。
「おい…こいつ…」
「んだよ、早く言えよ!」
男たちの一人の顔が見る見るうちに青ざめていく。ただ、ほかの人たちは気づいていないようだ。
自分たちは、今、決して適うはずがない相手を目の前にしていることに。
「まあ誰でもいいわ。さっさと手え離せ!!」
「だから・・・」
青筋が額に浮かんでいる静雄。そろそろ限界のようだ。
「てめぇが、」
男の腕をひねりあげる。私の腕をつかんでる余裕がなくなり、顔を歪めながら手を離した男。
「離せっつってんだろ!!」