池袋物語
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「つまり、僕たちはもともと二次元の住民であって、名無しさんちゃんと僕たちが会うってことは絶対に不可能である…と」
「はい…要するに、そう言ったことです」
うーん、と頭を悩ませる新羅に、ポカンとしてるトム。はあ?と言葉には出さないもののすごい冷たい目で見てる静雄。
「(……その反応は間違ってないと思います)」
何とも言えない空気が漂う。原因は何だか分かっている、が全て事実なのだ。ある程度の非日常を体験している3人でも押し黙ってしまう。それほど、不可解で馬鹿げたこと、と言うことなのか。
元はと言えば、本によって全てを引き起こされた。空白のページが多い本。一体何の意味があるのだろう。
「(って…)」
近くにあったバックからあの本を取り出す。
ページをめくってみると、増えていた。
文字が、増えていた。
ショックと恐怖で動かない身体。この数時間の内に、誰がどうやって本を書くことができようか。内容はもちろん、足をくじいた主人公が静雄の背中に揺られ、新羅の家にいるといったものだった。
「…名無しさんちゃん?」
震える手から落ちた本。落とされた本は、新羅の手によって拾い上げられた。
「見ていいかな?」
ただ首を縦に振ることしかできない。今何か言葉を言おうとしたら、叫びだして取り乱しそうだった。
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同時刻 池袋