池袋物語

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人がトリップする、なんて不可解な小説やドラマに胸を躍らせることは誰しもあると思う。しかし、実際に体験できる人なんてのはいないし、ましてやもしそんな人がいたらどこかの闇医者が、前代未聞空前絶後!なんて叫ぶだろう。
しかし、まさしく今、その状況なのはもう言うまでもないだろう。

数十分前、静雄とトムは仕事を思い出しあわてて部屋から出ていった。今現在部屋にいるのは、いつもの2人に加えて1人。



「へえ!じゃあ名無しさんちゃんが知ってる池袋と僕たちが知ってる池袋に違いはないんだ」



「はい、私が知る限り全く一緒です」



『(いつの間にか意気投合してる…)』



他人が聞いたら何を言っているのかと不思議に思う会話を、途切れることなく続ける新羅と名無しさん。
それを横目に本を読み終えたセルティはPDAを取り出し文字を打ち込む。



『この主人公らしき人が、名無しさんちゃん…でいいんだよね?』



「はい、おそらく」



『で、何でこの本にはこんなに余白のページがあって、私や新羅や名無しさんちゃんが出ているんだ?』



誰も答えを知らない疑問を投げかかけたセルティ。しかし答えられる人は誰もいない。気まずそうに新羅と名無しさんは顔を合わせて黙り込んでしまった。



『な、何かいけないことを聞いたか…?』



「いえ!そんな事はないんですが…」



「ただ、僕たちにも何がなんだか…ね」





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