池袋物語

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『(おかしい…)』



黒バイクは走る。後ろにヘルメットをかぶった少女を乗せて、走る。

なぜ、黒バイクが少女と2人乗りをしてるのか。

黒バイクの知り合いが見たならば、さほど不思議な光景には見えないだろうが、一般人から見たとなれば不思議にしか見えないだろう。同日に起こった2つの異様な光景、喧嘩人形である静雄が少女を背負っていたことと今の黒バイクのこと。
池袋はこれからしばらくこの話題で持ちきりになるだろうが、はたしてこの二方の少女が同一人物であると気づく人はいるのか。


そして、彼らが非日常に引きずり込まれているのに気づく人は、いないだろう。
当の本人たちでさえ、気づくのはもう少し先なのだから。




『(…確実に、やばい気がする)』



黒バイクは走る。
池袋の町を、音もなく走る。
非日常に引きずり込まれていることに、彼女はまだ気づかない。


『(あの看板は三回目…)』



何かがおかしい。
ただ、それに気づけるのはバイクに乗っている二人だけしかいない。



『(この通りは十回近く通ったよね?……一体なにがどうなってるんだ!?)』




また、少女も異変を感じていた。





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