池袋物語

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朝日が燦々と降り注ぐ、池袋の高層マンション。
今日も街は動く。昨日の真似を、幾度も幾度も繰り返す。

そしてまた今日も繰り返される、はずだった。


朝の雰囲気とは似つかわず、真っ黒なワンピースタイプのパジャマを着用し、真っ黒の松葉杖をつく名無しさん。相変わらずの白衣姿の新羅。それに、真っ黒なパジャマを着た首無しライダーことセルティ。



「ありがとうございます、セルティさん。松葉杖助かります」



『ああ、気にしないで!役に立てて良かった』



昨日痛めた足首がまだ治っていない名無しさんはセルティに松葉杖を「出して」もらっていた。
首無しライダー、黒バイク、池袋の都市伝説。異名を付けられているセルティ・ストゥルルソンには首が無い。身体から影を出して形を変えて操る、そんな彼女の姿を見たことがある人はそういない。



「さて、名無しさんちゃん。今日はどうする?」



「うーん…」



昨日新羅が言ったのとは反対に、やはりこれは夢ではなかった。
となると、これは異世界でありながら現実の世界。
名無しさんは注いでもらったコーヒーを一口飲んだ。



「…電車を使ってみようと思います」



『電車、かぁ…』



セルティと共にバイクで池袋を出ることは出来なかった。ならば、法を変えて電車で出てみようと言う考えに自然と至った名無しさん。



「本の謎も分かりませんし…」



「あ、それについてなんだけど」



仮説を立ててみたんだ、と新羅。机に置きっぱなしにしていた本を手に取り笑顔で言葉を続ける。
文字が書かれているページ数は、まだ五分の一にも満たない。




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