池袋物語

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「(もし、新羅さんの仮説が本当だったら)」



名無しさんはバイクに跨り、セルティの背中で考えていた。



「(…ううん。新羅さんの言ったことは、たぶん、正しい…)」



先ほど聞かされた内容に、多分正しいと言うことに間違いはないと新羅は胸を張って言っていた。セルティ然り、名無しさん然り、意見が同調したのは言うまでもなかった。

しかし、動いてみないことには始まらない、と池袋駅へと向かう首無しライダーと名無しさん。

駅の少し手前、人目を避けて道路を走り人通りの少ないところでバイクは止まった。



『ここで待ってるからね』



「ありがとうございます。本当に、すみません…」



『いいのいいの!私が好きでやってることだし』



「本当にありがとうございます」



じゃあ、たぶんまた後で、と別れを告げた2人。
2人がこう言うのには、少なからずとも同じ確信があったである。



『(池袋から、出られない)』



セルティは思う。
ため息をつきバイクを降りてシューターを人なですると、飼い主の気持ちを読み取ったのかシューターは小さく鳴き声を聞かせた。



「(私が本来いるべき場所は、この世界に存在しない)」



名無しさんは思う。
松葉杖の力を借りながら、見慣れた池袋駅に入っていく。ICカードで改札に入り、いつものように最寄り駅へ向かう電車のホームへと向かう。




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