middle

□三点減点、目つきが駄目
1ページ/1ページ



だから、私は好きでここにいるんじゃないし。折原臨也の助手とか知らないし。



現在、朝の5時。先に行っておくけど、私は早起きは苦手だ。というか嫌い。なのに今日、こんなにも早く起きているのは、
「あ、明日俺早いから起こしてよ。部屋の外から大声で呼んでくれれば起きるから」
とあのうっっっざい!折原臨也に言われたからだ。というか目覚ましをセットしろ目覚ましを。

部屋の前に立ち、一応ノックをする。もちろん返事はない。



「いーざーやーさーん!起きてくださーい!」



ドアに耳を当て中の様子をうかがう。が、物音一つしない。



「…うーざーやー!起きろー!!」



日頃のうっぷんを晴らすように、部屋中に行き渡る大声でもう一度声をかける。内容がどうとか気にしない。
再びドアに耳を当てるもやはり物音一つしない。



「…入りますよ?」



だんだんめんどくさくなってきて、中に入ろうとドアに手をかける。出来るだけ、物音をたてて。無駄に勢いよくドアを開き、無駄に足音をたててベッドへと歩いた。しかしまだ寝息が聞こえる。
掛け布団から少しだけ出ている顔を覗く。大分熟睡のようです、はい。
すやすやと眠る顔からはいつものあの憎たらしい笑顔(その他もろもろ)が想像できない。整った顔に少し寝癖がついてる髪。普段見せない姿にほんのちょっと、胸が強く脈を打つ。



「って、さっさと起きろ!」



恥ずかしくていたたまれなくなって、掛け布団を思い切り剥ぐ。



「臨也さ、うわっ!」



グラッと体が引っ張られ突然一転した視界。いつの間にかベッドに仰向けになっていて、いつの間にか折原臨也が私を組み敷いていて…。



「勝手に部屋に入ってくるなんて、ずいぶんいい度胸してるよね」



「…起きてたんですか」



「名無しさんが部屋に入ったくらいからかな。君が何するのか見てみたかったから、少し狸寝入りしてたんだけど…その赤い顔、どうしたのさ」



ああ、またいつもの憎たらしい顔に戻った。だんだん近づいてくる顔から逃げようと体を起こそうとするけど、がっちり捕まれた腕からは逃げることはできない。



「離してください…!」



「答えるまで離さないけど」



いつもの大嫌いなこいつの笑顔なのに、どうして、顔の熱が、引かない?



「それはっ…」



鼻と鼻が付きそうな距離。
顔に触れる折原臨也の髪の毛とか、鼻をくすぐる臭いとか、意外にきれいな瞳とか、何でこんなに心臓がうるさいのかとか。
全部全部、初めてで頭がついていかない。



「うん、駄目」



「…へ?」



パッとつかんでいた腕を離し、ベッドから降りた折原臨也。



「駄目。全然駄目!」



「な、何がですか?」



ニヤニヤしながら駄目と繰り返す。さっきまでのあの雰囲気は何処に。



「名無しさんの赤面の理由はだいたいわかるし、少しからかってみようと思って。いやぁ、なかなか面白かったよ!取って食おうなんてつもりは最初から無かったけど。でも、駄目だねぇ」



「だから、何が」



「何って」



スッと私の顔に指を向ける。



「その、」







三点減点、目付きが駄目
(でも俺は嫌いじゃないよ、別に)(……うざ)(その赤い顔も)(…っ!)

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ