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□三点減点、目つきが駄目
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だから、私は好きでここにいるんじゃないし。折原臨也の助手とか知らないし。
現在、朝の5時。先に行っておくけど、私は早起きは苦手だ。というか嫌い。なのに今日、こんなにも早く起きているのは、
「あ、明日俺早いから起こしてよ。部屋の外から大声で呼んでくれれば起きるから」
とあのうっっっざい!折原臨也に言われたからだ。というか目覚ましをセットしろ目覚ましを。
部屋の前に立ち、一応ノックをする。もちろん返事はない。
「いーざーやーさーん!起きてくださーい!」
ドアに耳を当て中の様子をうかがう。が、物音一つしない。
「…うーざーやー!起きろー!!」
日頃のうっぷんを晴らすように、部屋中に行き渡る大声でもう一度声をかける。内容がどうとか気にしない。
再びドアに耳を当てるもやはり物音一つしない。
「…入りますよ?」
だんだんめんどくさくなってきて、中に入ろうとドアに手をかける。出来るだけ、物音をたてて。無駄に勢いよくドアを開き、無駄に足音をたててベッドへと歩いた。しかしまだ寝息が聞こえる。
掛け布団から少しだけ出ている顔を覗く。大分熟睡のようです、はい。
すやすやと眠る顔からはいつものあの憎たらしい笑顔(その他もろもろ)が想像できない。整った顔に少し寝癖がついてる髪。普段見せない姿にほんのちょっと、胸が強く脈を打つ。
「って、さっさと起きろ!」
恥ずかしくていたたまれなくなって、掛け布団を思い切り剥ぐ。
「臨也さ、うわっ!」
グラッと体が引っ張られ突然一転した視界。いつの間にかベッドに仰向けになっていて、いつの間にか折原臨也が私を組み敷いていて…。
「勝手に部屋に入ってくるなんて、ずいぶんいい度胸してるよね」
「…起きてたんですか」
「名無しさんが部屋に入ったくらいからかな。君が何するのか見てみたかったから、少し狸寝入りしてたんだけど…その赤い顔、どうしたのさ」
ああ、またいつもの憎たらしい顔に戻った。だんだん近づいてくる顔から逃げようと体を起こそうとするけど、がっちり捕まれた腕からは逃げることはできない。
「離してください…!」
「答えるまで離さないけど」
いつもの大嫌いなこいつの笑顔なのに、どうして、顔の熱が、引かない?
「それはっ…」
鼻と鼻が付きそうな距離。
顔に触れる折原臨也の髪の毛とか、鼻をくすぐる臭いとか、意外にきれいな瞳とか、何でこんなに心臓がうるさいのかとか。
全部全部、初めてで頭がついていかない。
「うん、駄目」
「…へ?」
パッとつかんでいた腕を離し、ベッドから降りた折原臨也。
「駄目。全然駄目!」
「な、何がですか?」
ニヤニヤしながら駄目と繰り返す。さっきまでのあの雰囲気は何処に。
「名無しさんの赤面の理由はだいたいわかるし、少しからかってみようと思って。いやぁ、なかなか面白かったよ!取って食おうなんてつもりは最初から無かったけど。でも、駄目だねぇ」
「だから、何が」
「何って」
スッと私の顔に指を向ける。
「その、」
三点減点、目付きが駄目
(でも俺は嫌いじゃないよ、別に)(……うざ)(その赤い顔も)(…っ!)