Book 大好きな君へ
□love song...]V
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赤く染められる中学校の屋上。9月に入った空は、まだ夏だと言わんばかりに真っ赤に染められている。
あれから、どのくらいたったのだろうか。
不思議と涙は出なかった。いや、もしかしたら出ていたのかもしれない。もしかしたら大声で泣いていたのかもしれない。
自分がなにをしていたか思い出せないほど、フェンスにもたれている私は無だった。
「好き」
たった、一言。
「好き…」
この一言が、全てを変えた。
獄寺に言われたこの言葉も、私が獄寺に言ったこの言葉も、何もかも、全て全て全て変えてしまった。
校庭には部活動をしている人たちの姿。その中に山本の姿を見つけた。いつもだったら屋上から叫んでいたのに、なのに、どうしてか、今日は全く声が出ない。
「…っ」
代わりにあふれ出たのは涙だった。やっと、自覚できた涙だった。
「好き…なのっ…」
あの時のあの行動もあの言葉も、全部全部、嘘、だったのだろうか。
「…隼、人」
消え入りそうな涙声は、誰にも届かない。