Dream

□「結構やるじゃん」
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放課後のグラウンド。毎日部活が終わった後も自主練習をしている山本先輩。
私は今、この山本先輩に猛烈片思い中。けど話しかける勇気なんかなくて、ましてや近づく勇気なんかもっとなくて。だから毎日こうしてグラウンドの影から姿を見てるだけ。




「(毎日見てるなんて変態みたい…)」




まあ私はこれでいいんだけどね、なんて嘘だけど。自分に言い聞かせた言い訳に苦笑いする。
ふと時計を見るとグラウンドに来てから30分近く経っていることに気づいた。




「帰ろ…」




さようなら、心の中で呟く挨拶。この一言さえも声に出せないなんて情けない。
グラウンドに背を向け一歩歩き出したら背後で何かが落ちる音がした。
振り返り地面を見るとそこにはボールが落ちている。ボールを拾い上げグラウンドを覗くと視界に入ってきたのは、こっちに走ってくる山本先輩。




「(わっ、どうしよう、山本先輩が)」


「おっ、拾ってくれたのか?サンキュー」


「あっ!いえ!」




拾ったボールを渡す。多分この時点で顔は真っ赤。
ちょっと強く打ちすぎたのなーなんて笑う先輩の笑顔を見たら、今度は耳まで真っ赤。




「そーいえば、いつもここにいるよな?」


「…え」




気づかれてた、気づいてた。
気づいてくれていた嬉しさと、気づかれてた恥ずかしさ。
いてもたってもいられなくて、今すぐ逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。




「そんなに…」


「…っ!」




見んじゃねえよ?それとも、来るなよ?
毎日、覗き見なんかするんじゃなかった。今更深い後悔をする私。
スカートの裾を握りしめギュッと目をつぶり俯く。
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