Dream
□嘘、ほんとは大好き
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「っ名無しさん!」
「来ないで!」
私を追いかけるツナ。
お願い、追いかけないで。じゃないと私…
必死に逃げる私に追いつき私の手首をつかむ。手をふりほどこうとするが女の私が男のツナに勝てるはずもない。抵抗する私をツナは後ろから抱きしめた。
「どうして…俺を避けるんだ?」
今にも消え入りそうな声で訪ねてくる。
避ける理由、そんなの言える訳ないじゃない。だって…もし言ったらツナの未来は大きく変わるような気がするの。
「嫌いになったからよ」
視界が滲む。声が震えそうになる。
だってこんな嘘つきたくないんだもの。
ツナの息を呑む音が聞こえる。私を抱きしめている腕の力が弱まった。
「マフィアの彼女でなんかいたくないの。そんな残酷な世界…冗談じゃないわ」
ボンゴレファミリー10代目。
ボスになったツナの側なんかに私がいたら邪魔になるだけ。
でも、側にいたいの。離れたくないの。マフィアの世界になんかな行ってほしくないの…。
けどこんなの勝手なわがまま。
だから嘘をつくの。誰も幸せにならない嘘を。
「嫌いなのよ。マフィアもツナも」
諦めたのか、ツナはとうとう腕を離した。ツナの温もりが消える。もう感じられることはない温もり。
知らずと涙が次から次へと流れてくる。
こんな顔見せられない。ツナに背を向けたまま歩き出す。
「忘れない。俺はずっと名無しさんを…」
「じゃあね」
声が少し震えた。けど聞こえなかったはず。最後の会話がこんなのなんて悲しすぎる。
でも仕方ないのね。これがきっと私達の運命なの。だれもがみんな、ハッピーエンドを迎えられるはずはないの。
…けど最後に伝えてもいいと言うのなら、伝えても罪にならないというのなら。
最後に一言だけ、
嘘、ほんとは大好き
(こんな悲しい思いをするのなら、
あなたと出会わなければよかった)