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□取引
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桂と再び言葉を交わす時がこんなにも早く来ようとは、神の導きか?
それとも神の気まぐれな戯れか。
どちらにしろ気の利いたお導きよ
・・・・取引・・・・
「こ、ここは・・・」
勢い良く扉を開けた桂の目の前に、異様な光景が広がった。そこにはいくつものガラスケースの中に怪しく光を放つ刀が安置されていた。
そして部屋の奥で待ち構えていた様に笑みを浮かべる男。
「た・・高杉」
「ヅラァ、短い髪もなかなかお似合いだぜ?」
壁にもたれ掛かり、にやりと笑う。
両側の壁に沿って並ぶ紅色の刀――桂はそれらに見覚えがあった。紛れも無く、昨晩何者かが自分を斬り裂くのに使った、あの刀だった。
「ふ・・マヌケだなぁ、似蔵のやつに斬られて死に損なったらしいな」
「やはり貴様が仕向けたのか・・」
「いや、ありゃ奴が勝手にやったことだ。まぁ・・こうしてお前の方から出向いてくれたんだから喜ぶべきか」
桂は深手を追いながらも、怪しげな刀を振り回すその辻切りの後を付けた。その先で、組織の指揮をとっていたのは紛れも無く、高杉の姿だった。
「ふん、こちらこそ思いも寄らぬ大魚に出会えたよ、高杉」
二人は部屋の端と端で、互いに歩み寄る事もない。高杉は楽しそうに笑い、桂は威嚇する様な険しい目つきで睨んだ。
「これらはさしづめ、殺人刀か・・」
「ふん、この腐った世の中ぶっ壊すだけのことよ。その為には手段は選ばねえつもりだ」
高杉はガラスケースに歩み寄ると、中の刀を愛おしむように眺めた。
「これはなぁ、妖刀・紅桜・・・この世の恨みつらみを吸わせた、もはや持ち主の人間さえも支配しちまう恐ろしい化け刀よ」
「高杉・・貴様何を目論んでいるかは知らぬが、これを見てしまってはたとえ相手がお前だろうと斬るしかあるまい。ましてや俺や町の罪無き人々が傷つけられたのが事実とあれば尚更・・」
桂は部屋の奥で表情一つ変えないでいる高杉へ、一歩歩二歩と歩み寄った。