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□そのながい髪にふれ
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今そこの縁側で寝転がりながら、午後の昼下がりを悠々過ごしているその男。

勝手に人の家に上がり込むそいつは、さながら軒下に住み着く野良猫の様だ。


そしていつも決まって吐く台詞。


「ヅラぁ、お前ってやっぱ先生に似てるわ」


…またか。


「まぁもっとも、先生はそんな強情な性格じゃねえし、頭は良いし、落ち着いた大人だけどな」


誰が強情だ。
それに俺が馬鹿でまるで子供みたいな言い方だ。少なくとも馬鹿ではない事は確かだと自負しているが。



こいつは、好きな時にやって来ては、好きな様に過ごし、数日顔を見せないと思えばまたフラっとやって来る。
まさに野良だ。



「おいヅラ、聞いてんのかよ」


「…あぁ、聞いている。というかそれ何度も聞いたぞ、多分5回は聞いた」

「しょうがねえだろ、何かお前見てると言いたくなるんだから」




高杉晋介。

こいつと俺の間には長い歴史がある。

腐れ縁とはよく言ったもので、むしろ今となっては妙な間柄になっている。



「なあヅラ、あん時のこと覚えてるか」

「何だ?」

「お前が髪切りすぎた時だよ」


そうだ。
寺子屋時代にこいつと・・・そしてあれは銀時だ。



ある日のこと、桂が長かった髪の毛をばっさり切られた。

次の日、高杉はその髪を見ると、とたん機嫌を損ねたのだ。



「あぁ…あの時、お前が突然拗ねたのだったな」

「今思い出すとこっ恥ずかしいけどな」


そして、確かあれは銀時だった。
その場に一緒にいた銀時が『高杉は長い髪が好きなんだよな、というよりヅラの事が好きなんだろ?女みてえだし、ヅラ』と言った。

それに俺はむきになり
『違うぞ銀時、こいつは先生の事が好きなんだ!』

と、ついそう言ってしまった。

桂の言葉を聞いた銀時は、高杉をはやし立てた。

当然、幼い高杉は顔を赤くして銀時につかみ掛かり、殴り合いの大喧嘩になった。止めに入る俺や他の皆を巻き込んで、最後には先生にこっぴどく叱られた。





「あはは・・・あの時の高杉はかわいかったぞ、いつもはイジメっ子のお前もしばらくは威厳がなかった」


「・・・うるせえ!お前のせいでもあるんだからな・・・他の奴らにもからかわれたし」


高杉は昔を思い出し、恥ずかしそうに俺を睨んだ。



こいつは俺といる時、こんな風に自然な顔を見せてくれる。


普段、俺の知らない所ではどんな悪人面をしているのだか知らない。だが、今の目の前にいる高杉は、昔のまま、何も変わってはいない。






「なぁヅラ…髪、触ってもいいかぁ?」

「なんだ突然、別にかまわんが・・・」


高杉は桂の髪をさらりとひと撫でした。


桂の長い髪。

昔は桂に触れたくても照れがあり叶わなかったが高杉だが、今やこんなに堂々と触れることができる。

( いつからだろう。こんなに素直にヅラに触れることが出来るようになったのは )


高杉はじっと桂を見る。



「・・・何だ?」

桂の一言が静寂を切る。


「な・・・なんでこんなにサラッサラなんだよ、お前」

「それは毎日トリーメントを欠かさないからだ、あとよく乾かすことだな」

「あ・・・・そう」


何かにつけてちょっかいを出したがる高杉に、桂はどんな事を言われようが真面目に返答をした。

そんな桂に、高杉はいつもたじたじになる。


(こいつ、何しても動じないっつうか、通用しないっつうか、真面目・・・なんだよな)


高杉はそんな事を考えながら、更に近寄り桂に密着する。



「近い」

「なあヅラぁ…抱きしめていい?」

「・・・気持ち悪い。昔のお前はもう少しシャイな感じで良かったのにな」

「うるせえよ。まぁ昔の事はいいだろ」


了解も出さぬうちに、桂は高杉の腕に抱きすくめられた。



懐かしい、高杉の匂い。


高杉が黙ると、外の木々が風に揺れるザーザーという音が部屋に響いてきた。



「……」


一向に離れない高杉。一言も喋らなくなったので、寝てしまったかとさえ思った。


「…おい高杉、寝たのか?」

「寝てねぇよ…」

高杉のつぶやく声が耳元で聞こえた。
このまま寝られては体勢がきついので困ると思ったが、起きていることが確認出来て桂は少し安心した。


「どうした高杉…珍しいな、いつもならこのまま盛るお前が」


「お前それ誘ってんの?」

「違うわ」

高杉は一旦顔を上げ桂を見た後、再び桂を胸に収める。


「いいじゃねぇか今日くらい。もう少し…このままでいさせてくれよ」


少しばかり沈んだ高杉の声に、桂はもう少しこのまま、好きにさせていようと思った。高杉の気の済むまで、こうして抱かれていようと。




その後もしばらく高杉は何も喋らなかった。


まるで母親にすがりつく子供の様だった。



(…らしくないな…)


桂はその寂しげな背中に、そっと腕をまわした。


fin *


…あとがき…

なんか意味不明ですみません;
何気ない日常を書いてみたくて(何気ないか?)

ヅラにだけは甘えていたい高杉。

↑そうであってほしい(笑)

最近桂に母性を感じて仕方なかったので、こんなもの書いちゃいました(笑)

 

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