Story
□板チョコ
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待ちに待ったバレンタイン。
「はい、これっ」
「ありがとー、って、これ…」
彼女がくれたチョコレート、それは。
板チョコ。
赤い包装紙の、市販の。買って、そのまんまって感じの。
板チョコ、一枚。
「ねえ、これだけ?」
「ん?」
バレンタイン。俺がこの日をどれだけ楽しみにしていたか。
「あのさ、あの、手作りとかさ、」
「買ったけど。」
「可愛いラッピングとかさ、」
「レジ袋入りがよかった?」
笑顔で答える君。
うん、手作りは無理かな、とは思ってたよ?
でもさ、せめて可愛いラッピングとかさ?
思いっきり肩を落とす俺に、彼女は慌てて、
「い、いいじゃん!他の人はキ●ト●ットだよ!」
他の人にも、あげてたんだ…
っ、何その微妙な差!
微妙すぎるよ!
「…いらないなら返してくれる?」
「いや、すんません!ありがたいっす、喜んで頂戴いたします!」
冷たくなった表情に、慌てて板チョコを奪い取る。
めずらしく一瞬で機嫌をなおした彼女。
…もらえただけ、嬉しいとしようか。
家に帰って、部活やクラスの女子からもらった可愛い義理チョコを机に置いて、ため息。
たった一枚の板チョコを見つめる。
どんなに見つめてたって、板チョコ。
突然変異は起こらない。
きっと、これに愛がこもってるんだ!
赤い紙の下に、銀紙。
銀紙のはじを剥がして、一口かじる。
もう少し剥がして、また一口かじろうとして、…止まる。
ただのミルクチョコなのに…その上に、白い、塊?
慌てて銀紙を剥ぎ取る。
そこには、
【ばーか!】
慣れてないのがよくわかる。
ゆがんだ、ホワイトチョコレートの字。
不器用な彼女のこと、きっとこれができるまでに10枚は無駄にしてる。
丁寧に包み直されていた赤い包装紙と銀紙。
愛のこもった、一枚の板チョコ。
end?
おまけ(?)
「来年は、LOVEって描いてあるのがいいな」
「は!?何いってんのばーか!!」
こんどこそ、end.。