Story
□電車
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田舎の、揺れて煩い電車。
昼間、朝より更にガラガラ空きの電車。
同じ車両に人は10人くらいしかいなくて。
あたしの隣には、この間付き合い始めたばかりの、彼氏。
電車
漫画や小説みたいに、満員電車で密着☆なんかが起きてるわけじゃない。
むしろ、席に座ってる。
同じイスに座ってるのは、ただ一人だけ。
体温が空気を伝ってくる距離に、彼がいる。
時おり会話もあるけど、緊張してるからか、すぐに途切れて。
揺れる電車。
煩いレールの音。
ふ、と彼の手が、あたしの指に触れた。
びっくりして停止したあたし。
偶然?手を離した方がいいの?
彼の反応か気になって仕方ない。
顔を見ようとしたら、彼の手が動いて
あたしの手を包んだ。
つい彼の方を振り向くと、彼は景色を眺めてて。
…その耳は、真っ赤だった。
揺れる電車。
煩いレールの音。
繋がれた手と向き合わない顔。
揺れて煩い田舎の電車が、あたしの好きな場所となった日。
end.