Story

□素直な言葉。
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忙しさで忘れかけていた仕事。

「これ、やっといたよ」

自分だって忙しいだろうに、代わりに仕上げておいてくれた。

「あっ…ごめん、ありがと!」

謝罪と感謝を続けて言うと、
ちょっと吃驚してるこいつ。何?





素直な言葉。





「…お前って、ごめんとかありがとうとか言えるんだ……」

「は!?」

…何いってんのこいつ?

「いや、なんかやらせるのが当たり前みたいなイメージがあってさ。」

え、どんなイメージ?
そんな風に思われてたんだ。
………。

「や、待って、ごめん!気ぃ悪くしたなら謝るよ!」

ちょっと考え込んでたら、怒ったかと思ったらしい、慌て始めた。
…別に怒ってはなかったけど。

「ただ…そーゆーの、いいなと思って。」

…?
話の方向がそれている気がする。
そしてこいつは何を言い出したんだ?

「素直なの、可愛いと思う!」

「………へ?」

えーと。
うん?

たぶん今、最大限に目を見開いてる。
んで、さっきまで必死だった目の前のこいつは、なにかに気づいたように止まった。と思ったら、だんだん顔が赤くなってきた。

「…俺、今何言った?」

「えーと、素直なの、可愛いと思う……?」

確かそんなかんじ?
驚きすぎて曖昧になってる。

目の前にある顔は、さらに赤くなって、その場にへろへろとへたりこんだ。
え、大丈夫!?

「うわー…俺何いってんだろ…っ」

ぼそっと呟いて、今度はいきなり立ち上がった。

「うん!やっぱ素直が一番だよな!!
じゃ、そゆことで!」

そして走り去っていく。
…なんだったんだ。



手の中にはあいつの仕上げた仕事。
目線はあいつの走っていった先。
頭は走っていったあいつの赤い顔でいっぱい。


ごめん、だって
ありがと、だって
思ったときには言ってきたけど

こんな反応、まさかだった。





……あいつが言ったのも、素直な言葉?







end.







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