Story
□素直な言葉。
1ページ/1ページ
忙しさで忘れかけていた仕事。
「これ、やっといたよ」
自分だって忙しいだろうに、代わりに仕上げておいてくれた。
「あっ…ごめん、ありがと!」
謝罪と感謝を続けて言うと、
ちょっと吃驚してるこいつ。何?
素直な言葉。
「…お前って、ごめんとかありがとうとか言えるんだ……」
「は!?」
…何いってんのこいつ?
「いや、なんかやらせるのが当たり前みたいなイメージがあってさ。」
え、どんなイメージ?
そんな風に思われてたんだ。
………。
「や、待って、ごめん!気ぃ悪くしたなら謝るよ!」
ちょっと考え込んでたら、怒ったかと思ったらしい、慌て始めた。
…別に怒ってはなかったけど。
「ただ…そーゆーの、いいなと思って。」
…?
話の方向がそれている気がする。
そしてこいつは何を言い出したんだ?
「素直なの、可愛いと思う!」
「………へ?」
えーと。
うん?
たぶん今、最大限に目を見開いてる。
んで、さっきまで必死だった目の前のこいつは、なにかに気づいたように止まった。と思ったら、だんだん顔が赤くなってきた。
「…俺、今何言った?」
「えーと、素直なの、可愛いと思う……?」
確かそんなかんじ?
驚きすぎて曖昧になってる。
目の前にある顔は、さらに赤くなって、その場にへろへろとへたりこんだ。
え、大丈夫!?
「うわー…俺何いってんだろ…っ」
ぼそっと呟いて、今度はいきなり立ち上がった。
「うん!やっぱ素直が一番だよな!!
じゃ、そゆことで!」
そして走り去っていく。
…なんだったんだ。
手の中にはあいつの仕上げた仕事。
目線はあいつの走っていった先。
頭は走っていったあいつの赤い顔でいっぱい。
ごめん、だって
ありがと、だって
思ったときには言ってきたけど
こんな反応、まさかだった。
……あいつが言ったのも、素直な言葉?
end.