小説2

□新芽
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スキスキ廉造→←無自覚雪男、コミックス3巻の林間合宿辺りの話。京都弁はすっとびました。




















「奥村くんはほんまお嫁にしたいくらい料理がうまいんやなー」

この時若先生の耳がぴくりと動いたのを俺は見逃さなかった。
おおそうか?だが俺男の嫁はお断りだぜどうせなら美人なお姉さんが良いかんな、と茶化すように笑う奥村くんをそっちのけで視界の端でカレーを上品に口に運ぶ先生の姿を追う。
こっち見いへんかなーって念力送ってみるけど残念ながら気付いては貰えなかったようで、しえみちゃんと楽しそうに話している。
正直しえみちゃんと若先生どっちが可愛いか聞かれたら即答でしえみちゃん!って答える自信はある、男ならば誰でも当然の反応だ。
だがどちらが好きかと問われたら……。
まぁ所謂、そういう事だ。

いつ何処で何故って問われて困るが好きなものは好きなのだ、無論女の子も好きだけど先生への気持ちはそれらとは違う類だという事を俺は知っている。
男志摩廉造、青春真っ盛りな15歳にして男に恋をしている。
周りの友達‥と言っても同郷の二人しかいないが。には到底言えはるはずもなくこうやって密かに恋心を募らせて行く今日この頃である。

それで肝心の相手の反応だがこれがどうも嫌いでもないが好きでもないらしい。
まぁこれは本人に冗談混じりに俺の事好きですかー?って聞いたらメッキで固めたような笑顔で嫌いでも好きでもありませんよ僕にとって貴方はただの生徒の一人ですし。というやり取りの元での答えなので本当はどうなのかはっきりは分からない。
だが本当に嫌われてはいないようでともすれば先程の様に自分の些細な言葉にも反応はするので脈がないとも言えないだろう。

なので自分の事をどう思っているのか探りを入れるべく俺は夕飯の片付けを抜け出してこっそり若先生と二人きりになる事に成功した、奥村くんにこき使わされそうになったり坊にサボるなとおかんの次の次くらいに怖い説教をされそうになりならがらもこのチャンスを掴んだ俺を誰かに褒めて欲しいくらいだ。

何やら紙にペンを走らせメモをとってブツブツ言ってる先生にこっそりと近付くとこちらには気付いていないようで、斜め後ろからひっそりと見つめる。
するとかれは手を動かし視線をメモに落としたままで口を開いた。

「何か用ですか志摩くん」

なんやばれとったんか、流石歳は俺と変わらないのに祓魔塾の先生になるだけあんなぁと感心しながらもくしゃりと後ろ髪をかく。

「いやぁさっきの気にしてはるかなぁって」
「さっきのって何の事ですか、というか片付けはどうしました。」
「それは横に置いといて」
「置くなよ」

先生の素早いツッコミにケラケラと笑う、やっぱりこの人俺を飽きさせないなぁ。

「奥村くんをお嫁さんにしたいって言った事を気にしてはるかと思ってフォローしに来たんですわ」
「…そんな事の為に片付けを抜け出して来たんですか?というかフォローってなんですか。」

はぁと息を吐き出して疑念の目を向けてくる若先生、やっぱり気付いてないんだな自分があの発言をどれほど気にしているか。だけどね俺は知っているんだ、だから自覚して貰う為に来たんだよ。

「あれは冗談で、俺は違う人が好きだって事です。」
「……はぁ。」
「その人は可愛くはないんですけど綺麗で堅物で頑張り屋さんで人一倍努力を惜しまない人なんです」
「‥すみません良く話が分からないんですが、恋愛相談には僕は向きませんよ?」

キョトンとしている先生に俺は思わずくすりと笑った、すると先生は何やら馬鹿にされたものと誤解したのか眉間にシワを寄せてこちらを睨んで来る。そんな事をしても美人なのは変わらないのに。

「からかってるなら余所へ行って下さい、僕は諸々の準備で忙しいんです。そもそも貴方の事は僕には関係ない兄さんをお嫁にしようとその誰かと結ばれようと勝手にして下さい。その時はお祝いの花束でも……贈りますよ」

少しだけ間を空けたのは、瞼を伏せてその時を想像して無自覚に傷付いたからなんですね先生?
俺は先生の事なら知ってるから分かってるから。

「ありがとうございます、でもその花束意味ないですよ?」

だって俺と結ばれるのは俺と貴方だから。
自分から自分に贈る花束だなんておかしいでしょう?
でも俺はまだまだこの甘い恋のやり取りに浸っていたいので告白はもう少し待ってて下さい。
貴方が完全に俺の事見てくれた時にしますから、ね?



END

雪男は恋心が少し芽生えた程度なので物凄く微妙な感じにしてみました、そしたら志摩のヤンデレにも見えるっていうね。


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