小説2

□君に誓う。
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燐×雪男、シリアス、事後表現有り、雪男視点。


















夜中、ぱちりと目が覚めて限られた視界の中で周りを眺めればぐうすかと同じベッドの隣で眠る燐の姿が目に入り反射的に頬をぎゅっと抓る。するとうーんスキヤキ…と唸って寝返りをうつ彼の姿を見ながら雪男ははぁとため息を吐き出した。
あのまま寝てしまったのか、兄と言ったら全く良い身分だ。
自分は好き勝手やっといて弟の事なんて微塵も考えないんだから、僕がどれだけ苦労する事か…。
兄を叩き起こしてやって今から説教を垂らしこんでやっても良いが今はそれより処理の方が先だ、と判断した僕はむくりと身体を起こす。
それと同時に脚を伝う体液、そう先程まで僕達は所謂身体の関係というものを結んでいた。
この液は兄が僕の中に出したもので僕の物ではない、なのに処理するのは僕という不条理さと言ったら。
愚痴を言っても状況は変わらないので枕元に置いた眼鏡を掛け、ついでに床に散らばる兄さんが脱ぎ捨てた服と自分が脱いだ服を回収しつつ静かに風呂場へと向かった。

洗濯機にそれらの服を入れる、明日‥先程時計をちらりと見たら日付が変わってしまっていたので今日の朝になるが。その時にでも回しておこう。
眼鏡を脱衣所の適当な場所に置いて風呂場に入りガス栓を捻りお湯を沸かす、シャワーの蛇口を捻り調度良い温度に調節しながらそれを頭から被るととても暖かくて気持ち良かった。

思わずまたため息が出る、安堵ではないこれからこの中のものを出さなければいけない憂鬱のため息だ。
兄には何度も何度もゴムを着けろと促しているのに気付いたら推しに推され流しに流されてしまっているのだ。
自分が翌日どれ程大変か、体調不良になって祓魔師の仕事が出来なくなったらどうしてくれるんだ!と怒鳴ったらそんな時はお兄ちゃんが代理で言ってやるよ!と笑顔でいうのでこちらも笑顔で銃口を構えて脅してやった、勿論弾は空だったが。

とにかく兄は手加減と遠慮というものを知らない、自分も体力には自信があるが兄の底しれないそれとは比べものになりはしないし自分がどんなにやめて欲しいと訴えても本当は嬉しいくせにとやめてはくれない。
昔から聞き分けは悪かったが今こんな風に改めて思い知らされると本当に胃が痛い。

指をボディソープで滑りを良くしながら中のものを掻き出す、行為を終えてだいぶ経っているはずなのにそれは妙に温かった。
全て出し終わってごちりと壁に額をぶつける、壁はヒンヤリと冷たかった。

「何やってるんだろう僕らは…」

血を分けた唯一無二の兄弟なのに、こんな背徳的で非生産的な行為をするだなんて神父さんに申し訳ない。
だがそれでも、それでもこの関係を辞められるはずも無かった。
兄が好きで、兄も自分が好きでそれが兄弟愛とかそんな簡単な言葉では言い表せない感情で。
もう兄弟だとか同性だとかどうでも良かった、兄も同様のようだった。
俺達妙な所で双子なんだな、と笑ってキスをした兄の顔は今でも鮮明に覚えている。
同時にこんな兄の表情が見えるなら世界を敵に回したって構わないと強く思った事も覚えてる。

魔神の落胤それが兄の呼ばれ方、自分だってそうだったはずなのに兄だけそう呼ばれるのだ。
ただ青の炎を受け継がなかった、それだけで。
兄の痛みを苦しみを取り除けたらと昔から思っていた、だから神父さんが万が一居なくなっても僕が護れるように祓魔師にもなった。
それでも今でも完全に護りきれてはいない、神父さんならこんな事絶対にないのに。

「弱気になっちゃ駄目だ僕は強くなった、それは誰の為だ?兄さんの為だろう、だったらもっとシャンとしろ…!」

ガツン、とバスルームの壁を拳で殴ると腕が痺れた。その痺れが自分に気合いを入れてくれるような気がした。
シャワーのコックを閉めバスルームを出てバスタオルを引き寄せる、滴る雫を拭きながら寝室へと舞い戻る。
相変わらずこちらの気もしらず爆睡している兄の頬を再び摘んだ、そしてすぐその後に同じ場所へ口づけを落とす。
誓いの口づけだ。どんな事があっても何があっても一番大切な存在を護ると、自分への証立ての。



END

雪男の弱さと強さのすべては燐だと思う。

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