小説2

□夏の魔力
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あまあまな燐×雪男


















じわじわと太陽が照り付ける夏、コンクリートが熱を反射してむわっとした熱さが体に伝わって来る。
燐はダラダラと汗を垂らしながら寮へと帰る。
寮の部屋に入ったら少しはマシかとも思ったがどうやらそのアテは外れたようだ、金持ち学校のくせにこちらは旧館だからかクーラーがついていない。
理事長に直談判してみたものの夏は暑いものなんですよーとかクーラーがガンガンに効いた理事長室で言われたので凄くいらついたが学園で一番偉い人がそう言うのならばいち生徒でしかない自分は涙を呑むしかないのである。

かくしてクーラーのない部屋で下敷きを扇ぎながら机に頬を擦り付けた、机は少しだけひんやりしていたがすぐに体温と同化してしまう。
今日も何か課題があった気がする、早くやらなくては弟がうるさい。だがこんな暑くては集中出来るはずもない。
そうやってウダウダと考えている内に燐は寝てしまった、起きた時はもう既に星が出ていた。

「うあっやっべぇ!いつのまにか寝ちまってた…!」
「ただいま兄さん、もう課題はやっただろうね」
「お、おうおかえり雪男!勿論だぜ!」

嘘っぽく笑う燐に雪男は不信そうに眉をしかめる、そして大きくため息を吐き出した。

「…奥村くんちゃんと課題はやりましょうね」
「……………ハイ。」

流石兄弟というか双子というか小さい頃から雪男に燐のごまかしは一度も効いた事がない、今回も例外はないようだ。
寝癖のついた髪を撫でながら鞄から課題を出した、今日も課題は鬼のように山盛りだ。

「なー奥村先生ェ、課題ちょっとは減らせないのかよいくらでもこれは無理…ってあー!」
「…っ、なんだよいきなり大声出して‥」
「その手に持っているのはゴリゴリ君!しかも期間限定の蜜柑味!雪男てめぇ自分だけ良い思いしようとしやがって…!」

雪男のその手にはゴリゴリ君(蜜柑味)が握られていてそれをさも美味しそうに食べながら彼はああ、としれっとした笑顔で笑う。

「コンビニ寄ったらあったから買って来たんだよ」
「んだよお兄ちゃんの分も買って来てくれよ!」
「兄さんはこの前僕のミネラルウォーター買い忘れたし課題があるから駄目、これ一本しか買ってきてないし」

まだミネラルウォーターを買い忘れた事を根に持っていやがったのかこいつ、どれだけしつけこいんだよ!と心の中でツッコミつつ暑さのせいで雪男を怒らせて喧嘩する体力もないので燐は大人しく課題をする事にした。

聞こえて来るのは蝉の声と自分が動かすペンの音としゃくしゃくと雪男がアイスを食べる音。
燐は頬を伝う汗を拭いながらちらりと雪男を盗み見た。
彼も暑いらしくアイスを口に含みつつも額にうっすらと汗をかいていた、手の甲にアイスが落ちてそれを舐めとる仕種に燐は無意識に喉を鳴らす。
そういえば暑さのせいで喉がカラカラだ何か冷たい物が欲しい、例えばジュースやかき氷とか‥アイスとか。
頭の中で思い描いたそれは目の前にあるというのに何故手に入れないのだろう?
ああもう暑さの限界だ、と思った途端ペンを机に叩きつけていた。

「兄さん課題終わったの?…兄さん?」

丁度最後の一口を口にした雪男に近付き燐はペロリ、と若干アイスの汁が滴る棒を舐めとった。僅かに甘かった。
棒でこんなに甘いのだから先程食べたばかりの唇はどれだけ甘くて冷たいのかと考えるだけでも胸が躍った。

「ちょっと兄さん…っ何や‥ッん、んん……っう!」

唇を唇で塞いで舌を侵入させて粘膜をたっぷりと撫でた、中は冷たくて甘くて心地好かった。
もっともっと欲しい、と角度を変えて舐め回すようにキスをしているといきなりグンッと思い切り後頭部を捕まれ離された。
はたと目の前に視線をやると真っ赤な顔で小さく震えはぁはぁと息を整えながらも怒りのオーラを纏う雪男がいて燐はしまった、と思ったが時既に遅し。

「課題もやらないで何やってんだよ兄さんは…!もう今後一切兄さんにはゴリゴリ君を含むアイスは食べさせない、買っているのを見つけた時点で囀石5時間の刑だからな…!」

こうして燐はゴリゴリ君を禁止されひっそり買っては囀石5時間の刑に処されたとかされなかったとか。



END

課題が終わったら雪男はゴリゴリ君をちゃんと買ってあげると思う。

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