10/09の日記

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with you…(健×優一)
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『これから暫くの間、佐藤健と仲良くする事を禁止する。仕事はもちろん、プライベートでも会わないように』

事務所の社長からの一言に、優一は自分の耳を疑った。

「はっ…?な、何で…???」

優一が意味がわからないと社長に詰め寄ると、社長は低い声で静かにこう続けた。
「中村。お前もわかっているんだろう?このまま佐藤君とセットで売っていくとしたら、お前は一生彼を超えられはしないだろう。だから事務所としてもお前の事はピンで売っていきたいと考えている」
「うっ…!!」
優一が言葉に詰まる。

自分は健君を超えられない。
それは自分自身が嫌というほどわかっている。
健君は自分の憧れ。
自分にはないものを彼はたくさん持っているから。
そんな彼だから好きになったし、彼も自分を好きだと言ってくれた。

(だから、近づきたいとは思っても、超えたいと思ったことなんてないのに…)

「だ、だからって何でプライベートまで…!!」
「では聞くが、お前は仕事とプライベートをきっちりわけることが出来るのか?出来ないだろ?すぐに仕事に私情を挟む、お前の悪い癖だ」
社長の冷酷な瞳がまっすぐに優一を見つめる。

(た、確かに…)
普段は内気で人見知りの激しい優一だが、一旦仲良くなってしまえば今までの箍が外れたように心を開いてしまう。だから仲良くなった共演者とはプライベートで遊ぶことも多くなる。
しかし、仕事が一緒に出来なくなる上に、プライベートでも会ってはいけないなどあんまりではないか。

再び優一が抗議しようとすると社長は席を立ち、
「とにかくそういうことだから。くれぐれも仲良くするんじゃない。わかったな」
そういい残すと部屋を出て行った。

それからすぐにマネージャーに今日はもう帰っていいからと言われ、優一は1人、部屋に閉じこもり考え込んでいた。

(健君と会っちゃダメ、かぁ…)

電王が終わってから、なんとなく感じていた違和感。
いつもだいたい同じ日に重なっていた雑誌の取材が合わなくなり、ブログにも健君の名前を出すなと言われ全然会えなくなった。
お互い、ドラマや映画の撮影で忙しいからと誤魔化していたけど、あれは事務所の力が働いていたんだ。
もちろん、事務所の言いたいこともわかる。
お互い事務所が違う以上、いつまでも一緒に仕事をすることもできないだろうし、将来への方向性を考えたらこのままではダメなんだろう。
でも、それにしたって…

「会えないなんて…寂しすぎるよ、健君…」

ポツリとつぶやいた声は、虚しく消えていった―――

「あ、そだ…」
何かを思いついたように優一はベッドから起き上がり鞄の中を探る。
そして取り出したのは、携帯。


(健君に電話してみよう―――)

リダイヤルからすぐに見つかった“健くん”と書かれた画面を選択し、発信ボタンを押す。
プルルルル、プルルルル…
『おかけになった電話番号は、現在使われておりません。』

(……えっ??)
番号を掛け違えたのかと、優一はもう一度確認してからかけてみる。
しかし、やはり通話口から聞こえてきたのは先ほどと同じ無機質なアナウンス音だけ。

(な、んで…?)
優一は頭の中が真っ白になった。
(だって、昨日までちゃんと通じてて…)
何らかの事情で携帯を変えたのなら優一のところに連絡が入るはずである。
ということは…
(着信、拒否…?)
信じたくはない。しかし健と連絡が取れない以上、そんな嫌な考えが優一の心を侵食していく。
(健くん…)

その夜、優一は1人、眠れぬ夜を過ごした――


☆★☆

あれから2週間。
健からは何の連絡もないまま、悪戯に時ばかりが過ぎていった。
その間も当然のように健と仕事が重なることはなく、真偽が掴めないまま優一は眠れぬ夜を過ごし、その影響で仕事にも身が入らずミスを連発してしまう。
ある日、そんな優一を見かねた鈴木が優一を食事に誘った。
「ちゃんなか、この後空いてる?メシ食いに行かね?」
「あ、うん。いいよ…」


☆★☆

「でさ!最近何か元気ないみたいだけどどーした?」
「あ、え、えっと…」
なかなか言い出そうとしない優一。
「なんだよー…ほら!別に誰かに言ったりしねーし、これでも心配してんだぜ?」
「ごめん…あの、実はさ…」

☆★☆
「ふーんそっか。そんなことが…」
優一が一通り話し終えると、それまで黙って聞いていた鈴木が口を開いた。
「やっぱ事務所が違うといろいろ圧力かかったりすんだな…」
「ズッキーはいいよね、荒木さん事務所一緒だし…」
言ってから優一はしまったと思った。
自分のことを心配してせっかく相談にのってくれている鈴木に対して皮肉めいたことを言ってしまって気分を悪くしてしまったらどうしよう。
しかしそんな優一の心配をよそに鈴木は大して気にした様子もなく陽気に続けた。
「そーね、まぁ俺たちもいろいろあるっちゃあるけどやっぱ事務所一緒だし。お前らよりは恵まれてんのかもな!」
優一は鈴木の器の広さを感じると共に、自分の小ささに泣きたくなってきた。
「もう俺、どうすればいいか…」
涙を堪えて俯く。
「でもさ…」
そんな優一を見て鈴木も真面目な顔つきに戻る。
「好きなんだろ?…健君のこと」
「………はい」
「じゃあ、自分から行動してみたら?待ってるだけじゃ、ダメなこともあると思うぜ?」
そう言うとレシートを持って席を立つ鈴木。
「今日は俺が奢っちゃるから、まぁ頑張んなよ」
ウインク1つを残し、店を出て行った。

「自分から…」

残された優一の顔には今までとは違う何かがうっすらと浮かんでいた。
(ありがとう、ズッキー)

☆★☆
それからほどなくして、優一にチャンスが巡ってきた。
電王の映画第3弾が決まり、メインではないにしろ自分と健も出演することになったのだ。
そして今日はその顔合わせの日。

(健君に会える…!!)

もしかしたらマネージャーに止められるかもしれない。
でも、優一はそれでも健に話しかけようと決めていた。
鈴木に勇気をもらったから。
(ズッキー、俺、頑張るからね…)

☆★☆

そして優一は意気揚々と顔合わせの行われる会議室に入っていった。
「おはようございまーす!!」
中に入るとそこには見知った顔ぶれが並んでいた。
「やぁ中村君、久しぶりだねぇ」
「あ、どうも!相変わらずお元気そうで…」

やはり一年間お世話になった現場は懐かしく、皆優一を温かく迎えてくれた。
そんな挨拶をしている中、優一は室内をぐるりと見渡し、健を探す。
「あ…」
部屋の一番奥、誰がと喋っている健の姿がそこにあった。
幸い今はマネージャーも挨拶回りに忙しく、席を離れている。
今なら、ほんの少しでも健と話ができる。
聞きたかったことが聞けるかもしれない。

逸る気持ちを抑えつつも駆け足で健の方に駆け寄っていく優一。
「た、健君!!」
「……」
「久しぶり。元気…だった…?」
「あぁ…」
やっと会えて嬉しくて仕方がない優一とは対照的に、面倒くさそうに適当な相槌を打った健は優一との話もそこそこに先ほどまで話していた者との会話を始めてしまう。

(たけ、る君…??)

ショックを受けた優一はそのまま自分の席に戻り、それからその日は一日中、健と視線を合わすことはなかった。

☆★☆

(なんで?健君…)
それまで優一は、健もきっと自分と同じで会いたくても会えないだけだと思っていた。
会えたらきっと喜んでくれるだろう。
そう思ったから自分から頑張ったのに。
マネージャーに止められることは予測していたが、まさか健本人から拒否されるとは考えてもみなかった優一は、先日の健の様子にショックを隠しきれずにいた。

(もう、僕のこと、好きじゃなくなったのかなぁ…)

いくら好き同士でいたからって、会えない時間が長引けば自然と気持ちも離れていってしまうのは当然。
というより、もしかしたら健はもともと自分に合わせてくれていただけで自分のことなど好きではなかったのかもしれない。
もしくはあまりにも不甲斐ない自分についに愛想を就かしてしまったのかもしれない。

そんなことばかりが頭を巡り優一は再び落ち込んでしまう。
気分を変えようとテレビを着けると、ちょうどROOKIESのメンバー達が何やらゲームに挑戦しているところだった。

(健君…)
画面の中で他の出演者と仲良さそうに笑いあう健。
(俺以外の人の前でそんな楽しそうな顔、しないでよ…)
いつしか優一の心の中にはどす黒い感情が生まれていた。
“嫉妬”という感情が…

☆★☆

ある日、優一が事務所に台本を貰いに行くと、ちょうど打ち合わせが終わった城田と鉢合わせた。
「あ、どうも…」
「ちょっといいか…?」


突然の城田の呼び出しに浮かない顔で付いて行く優一。
城田はROOKIESで健と共演している。
しかも城田は共演者の中でも特に健と仲がよく、お互いのブログにもよく名前が挙がっている。
(何の用だろう…?)
正直、今は城田と話す気分じゃなかった。
話している内にまたどんな皮肉を言ってしまうか…
優一は、なるべく早く終わらせてこの場を去ろうと思っていた。
と、今までズンズンと歩いていた城田がくるりと振り向き、満面の笑みで優一を見つめてきた。
「……??」
「健からの伝言!!」
人差し指をビシッと立て優一の前に突きつける城田。
「『どんな事があっても、俺を信じて待ってて?』…だそうだ」
「た、けるくん、から…?」
「健さ、随分お前の事気にしてたぞ?何があったかは知らないけれど、会う度にお前について聞かれるモンで結構大変だったんだからな」
苦笑交じりに城田が言う。

そんな…
じゃあ、本当は健君も…

優一の顔がパァァァッと明るくなる。
「し!城田さん!!ありがとうございました!!」
そう言い残すと優一はくるりと向きを変え、駆け出した。
「ああ、頑張れよ」
ヒラヒラと手を振り、にこやかに優一を見送る城田。


☆★☆

それまでの不調が嘘のように、優一は熱心に仕事に取り組んだ。
もちろん健とは会えていなかったが、それでも健の言葉を信じて毎日を過ごしていた。
そして、電王の撮影の日になった。

その日もやはり健の態度は表面的には冷たい感じがしたが、優一はもう前のようにショックを受けたりしなかった。
それは前回の時には気づかなかったが、健の態度には冷たい中にどこか温かさが含まれていることに気づいたから。
まぁそうでなくても健の言葉を信じるという優一の強い信念に変わりはなかったが。
だから優一は、今は一緒に仕事ができる。健の顔が見れる。
それだけで満足だと思った。

そしてその日の撮影が終わり帰り支度を済ませた優一が帰ろうと立ち上がり振り向いた瞬間、後ろにいた何者かとぶつかった。
「ったっ!!」
「あ、ごめん…あ…」
優一がぶつかったのは健だった。
「や、いいけど…」
そうぶっきらぼうに言った健だったが、そのくりくりとした大きな目は何かを訴えるように目配せをしていた。
(…?)
健の視線の先。
それは優一の上着のポケットに行き着いた。
不思議に思い優一がポケットの中に手を入れると…

カサッ

何かがその手に触れた。
(…何?紙…?)
優一が何かを見つけたのを確認すると健は足早にその場を去っていった。


☆★☆

優一が逸る気持ちを抑えて自宅に帰りポケットの中のものを取り出すと、それは一枚の紙だった。
そしてそこには携帯番号とアドレスと…
『遅くなってごめんね』
と健の字で書かれていた。

(健君…!!)
優一は嬉しくて早速その番号にかけてみた。
プルルルル、プルルルル…
呼び出し音がやけに長く感じる。
この前にかけた時には絶望に打ちひしがれていたが、今回は違う。

(健君…健君…!)
優一がまだかまだかと待っていると
ガチャ
『はい…』
それは聞きなれた、そしてずっと聞きたかった大好きな人の声。
「た!健君!?俺!!俺だけど…!!」
『……くくっ』
受話器の向こうから聞こえる微笑。
「たけるくん?」
『まったく優一君は…オレオレ詐欺じゃないんだからさ。名前くらい名乗りなよ』
「あ、ごめん…」
気が焦るばかりに大事なことを忘れていたことを指摘され、優一は真っ赤になる。
『ま、優一君らしいけどね』
「たけるくん…」
現場とは違う、前までと同じ優しい雰囲気の健に、今まで張り詰めていた優一の気持ちが緊張の糸が切れたようにくたんとなる。
「たけるくぅ〜ん…」
涙混じりにその名を呼ぶと、電話の向こうの健も安心した様子で話し出す。
『今まで、ごめんね…?』
「ううん…大丈夫。健君のこと、信じてたから…」
『俺も…ホントは現場でもっと話したかったんだけど…』
それから健は自分サイドで起こったこれまでのことを優一に話した。
優一との付き合いを反対されたこと。
携帯からも、優一の情報を消され、着信拒否にされたこと。
現場でも絶対に優一とは仲良くするな、とマネージャーに釘をさされ監視されていたこと。
「え…じゃあこれって…」
『うん、新しいの事務所に内緒で買ったんだ。コレ、優一君専用にするから』
「俺、専用…」
『嬉しい…?』
「うん…」
『まったく、素直すぎなんだよ、優一君は…///』
健が照れているのが電話越しにでも伝わる。
「健君…」
『ん?何?』
「大好き…」
『うん、俺も…』
「ははっ…///」
お互いが照れてしまって暫く沈黙が続く。
そんな沈黙を破ったのは健。
『優一君…』
「なに?」
『信じて、待っててくれてありがとう。これからは俺が絶対なんとかするから…』
「うん…」

いつしか優一の頬には絶えることなく涙が伝っていた。
それは温かい、幸せの涙―――



落ち込んだり、疑ったり。

いろんなことがあったけど

俺たちはきっともう、大丈夫。

お互いが必要な存在なんだって気づくことができたから。

だからこれから先、

俺たちを待ってるどんな試練にだって

ちゃんと立ち向かっていけるよね?

俺は

君と一緒だったら

どんなことだって出来ちゃうって気がするんだ


ね?健くん――――












☆★☆★☆★☆★☆
あとがき。

ゆうチャンの話を聞いて勢いで書いちゃいました磁石話!!
またの名を『磁石的ロミオとジュリエット』(笑)

もうね、磁石好きとしては今の状況は切なすぎるわけなんですよ、はい。
絶対裏でこんなやりとりが行われてるんだ!!←と言い張ってみる

だってブログから削除とか、あんまりじゃなかろうか…
せっかくブログ本買おうと思ってましたがそんな悲しい現実は見たくないのでたぶん買いません。
その代わり脳内妄想をいっぱいしときますから!!←←

つか他のDボの皆さんの呼び方とかわかんなかったんでいちいちブログとかお邪魔させていただきました!
そして勝手にズキアラを公式化してしまった罠。
いやだってあの写真集とかもう事務所公認じゃないすか!
羨ましすぎるだろコレ!!←優一くんの心の声(違う)
コレたぶん城田は健くんのこと好きなんだろうな…とか考えながら書きました←だから違うて

でもコレ3次元の中でもホントにデリケートな部分だから批判受けなきゃいいけど…
皆さんコレフィクションですからね??

そしてまぁ裏話的にはコレ1日で書き上げました!!
今日はほとんどパソの前から動いてませんからねあたし。
ホント、引き篭もりにもほどがあるぜ☆

とにかく磁石の再共演を願って…
そして彼らの幸せを願って…


アデュー☆←まさかのやぎゅ落ち(笑)





+++++++++++++++++++++
というあとがきを書いていたらしい過去のあたしwww←
補足としては健様のブログの優一くんの記事一切が削除されてブログ本になったのは事務所の陰謀じゃなかろうか…という話からはじまったんだよ、って事。

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