03/01の日記

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風雲御伽草子【五】
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「こんにちは」

そう言った彼女の声は、想像していたよりもずっとずっと綺麗に澄んでいて。
例えるならそれは、小鳥のさえずりのように。
繊細で、軽やかで、されどとても力強い、声。
それは彼女の柔らかい笑みにとてもよく似合っていて。
だから。
俺は瞬きするのも忘れて、彼女に魅入っていた。

「…留三郎?」
「………」
「おーい」
「………」
「留ー?留くーん?」
「………」
「留三郎ってば!!!」
ハッ!!
何度も俺に呼びかける伊作の声でやっと我に返る。
「ごめっ…何…?」
「んもうっ!いくらいさ子が可愛いからって見つめ過ぎだよっ!でもたとえ留三郎にであってもいさ子はやらないからなっ!!」
プリプリ、と擬音の出そうな顔で俺に注意する伊作。
「やだっ兄さんったら…」
と、そんな伊作の言葉に頬を赤らめる彼女。
「兄、さん…?」
というと、もしかして…
俺の?が付いた言葉に気付いた伊作がああ、という反応を見せる。
「紹介がまだだったね。この娘はいさ子、僕の妹なんだっ」
ほらいさ子も、という伊作の言葉に促されて彼女がゆっくりと俺の方を見やる。
「え、と…ぜ、善法寺いさ子です。兄共々、よろしくお願いします…」
ぺこり、と可愛らしくお辞儀をする彼女。
そんな彼女に自然と顔が赤らむのが自分でもわかった。
か、可愛い…///
「よ、よろしく…」
赤らんだ顔が恥ずかしくて、ぶっきらぼうにしか発せられなかった挨拶。
だけどそんな俺の言葉を聞いた彼女はふわり、とまた。
嬉しそうに微笑んだ、本当に、嬉しそうに。
だから。
俺もなんだか嬉しくなって彼女に微笑み返す。
二人の間に穏やかな空気が流れた。
「……ちょーっとお二人さん??」
僕の存在を忘れないでもらえるかな?と空気をもぶち壊す勢いで俺たちの間に割って入ってくる伊作。
「「…あ」」
綺麗にハモる俺と彼女の声。
「ごごごめん…!!」
「ちち違うの兄さんこれは…!!」
慌てる俺たちにジロリと嫉妬めいた視線を送ると
「…まぁいいや。とにかく留三郎、いさ子はあげないからなっ!」
ビシッっと俺の顔の前に指を突き立て再度忠告をすると、「行こっ」と彼女の手を掴んで歩き出す伊作。
行こうってお前…部屋の場所解ってんのか…?
と、密かなるツッコミを入れつつ、若干妹思いすぎる気がする彼を見送る。
が。
「お、おい…」
そこは…
「伊作!危な…」
「え…わぁぁぁぁぁっ!!!!」
ズサーッ
「伊作!?」
「兄さん!?」
いきなり視界から消え失せた伊作の、元居た場所まで駆け寄る。
消えたのが彼1人な所を見ると、どうやら瞬間的に手を離して彼女だけは守ったのだろう、彼女もまた心配そうに駆け寄ってきた。
下を見ると、見事に空いた穴(恐らくはあの穴掘り小僧が掘った蛸壺であろう)に、これまた見事に落ちている伊作が居た。
「大丈夫か!?」
「兄さん!怪我してない!?」
下に向かって問うと、ヒラヒラと手を振りながら彼は言った。
「だぁいじょおぶ〜僕ってさぁ、不運、だからぁ〜」
いつもこうなんだぁと、間延びした声が聞こえた。
「そ、そうか…」
本当に慣れているのだろう、すぐに穴から這い出てきた伊作を見ながら思った。





こりゃ、俺らのクラスの保健委員は決まりだな…










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あとがき。

久しぶりの更新です、亀更新すぎてすいません(´;ω;`)
伊作に関しては書いているうちにだいぶ固まりつつあるので今度はヒロインちゃんをしっかり固めていきたいと思いつつ。
ホントヒロインちゃんはまだかなりフワフワしてますねww
所詮行き当たりばったりな物書きなので;;;;←
とりあえず1つ言える事。
「此処の伊作はある意味食満より男前だ!!←」

…頑張れ食満っ(T^T)

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