捧げ文

□今度は俺から
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きっと依頼だろうとか。
また何かに巻き込まれているんだろうとか。

思っても不安で。

俺が女なら普通に聞いているだろう。

でも俺は男だ。

きっとこいつもそういうのがないと思って
男の俺とわざわざ恋人になったのだろう。

そう思ってしまって。

怖くて聞けなかった。

「何だよ、気になるじゃねぇか」

「いや…その、」

「…俺に言えないこと?」

「…、!違…!」

そう聞いてきた万事屋の顔が泣きそうな

悔しそうな顔で。

「ぎん…っ、」

「言ってくれねぇの…?」

「っ、」

あぁ。

俺が女々しくなったから。
言わなければよかったと後悔した。

「ぁ…え、…わ、忘れたんだよ!何て言おうとしたか!」

「…忘れた?」

咄嗟に

あの時嘘をついた。

こう言ったら万事屋が怒鳴ってくると思って。

そうすればいつも通りの喧嘩ができると。

だって

今の万事屋は静かにただ淡々と話してきて。

それが俺には怖くて、辛くて。

だから

そう思ったのに。

「…ふーん」

「ぎん…?」

今まで見たことのない冷たい目で

万事屋がこっちを見ていて。

俺はそのまま目を反らすこともできず

ただ

思った通りにはいかず

万事屋が怒っていることしかわからなかった。
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