捧げ文

□目の前にいるのは
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「……」

絶望的だ。

こいつを起こさないでここから抜け出すのは無理だ。
どうしたものかと考えていると

万事屋の手がさらに俺を引っ張って
きつく抱きしめてきて。

『ちょ、何だこいつ、起きたのかっ』

そっと顔を見れば苦しそうに眉を潜めていて。

それを見て俺は自然に手が伸びて
そいつの眉間をそっと撫でていた。

すると万事屋の顔がふっといつもの感じになって
ちょっと安心した。

『って何やってんだ俺は』

心臓の音がわかるぐらいには
緊張してきて

このままではいけないと

万事屋を起こそうと肩を掴んで。

「お、…おい万事、屋…」

軽く肩を揺らしながら小さく名前を呼ぶ。

情けない姿だと思いつつもこれが限界だった。

「おいっ…起きろ…」

「んー…」

ゴロンとうるさそうに寝返りをうつ万事屋は

俺を掴んだまま寝返りをうったために

俺は万事屋に乗り掛かるように引っ張られてしまって。

「ぅっ、…!」

「っ…」

俺の重さでやっと起きそうになった万事屋が

ゆっくりと瞼を開け

俺と目が合うが

その瞳はいつもより死んでいて、寝ぼけた状態のようで。

俺は恐る恐る

そいつに声をかけた。
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