捧げ文

□目の前にいるのは
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「…副長?」

「あ、お、おう悪ぃ」

「大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」

「あ、あぁ」

「あ、旦那の分も買っておきましたから」

「え、マジでか奢りか」

万事屋の前に置かれたのは俺のいつも頼む定食と一緒で。

俺は尚更食べれる気がしなくて
なかなか箸が握れなかった。

「副長食べないんですか?」

「…ちょっとな、」

「……」

「でもせっかく買ってきたのに、って旦那?どこに、」

「土方」

名前を呼ばれ向かいに座った奴の顔を見ると
さっきみた寝顔みたいに眉間にシワを寄せた万事屋がこちらを見ていて。

「行くぞ」

「は、どこに」

「お前の自室、これ持っていってあっちで食べんぞ」
持っていっていいよなと万事屋が山崎に聞くと

少し驚いた表情でえぇ大丈夫ですけどと答えて

俺も万事屋も

自分の分の朝食を持って

何故か俺の自室に向かった。

「万事屋…」

「ん?」

「何で食堂で食わねぇんだよ」

「…ぁー…」

「……」

万事屋がゆっくり止まってこっちを振り返って。

「いやお前あそこで何回も食べたことあるんだろ?あぁやってさ誰かが買ってきたものを食ってよ」

「あ、あぁ…」

「だから、いつもとは違うこと、してみてもいいんじゃねぇの?」

「…ぁ…」

あぁ。
俺の前でそんな顔で笑わないでくれ。

気付かせないでくれ
俺の今まで知らなかったお前を。

見せないでくれ
今までお前の俺に見せなかった表情を。

じゃないとこれ以上お前に惚れたら

この想いを言葉に表すことができなくなる。
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