捧げ文

□情けねぇな
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「何回言えばわかるんだあんたは…だから、」

仕事の話か?

いや、なら屯所ですればいい話か。

土方は何回も同じ話をしてるらしく
少しダルそうに、でもどこか嬉しそうに話をしていて。

俺は誰かわからないあの電話の向こうにいる奴が
羨ましくて無性に腹がたった。

「…あぁ、だからな近藤さん」

その名前を聞いた時

頭のどこかではわかっていた気がした。

「…、そうだよ、好きなんだ」

絶望的だった。

「何回も言ってるだろ、…本当なんだっ、」

二日酔いのせいか頭がガンガンする。

誰だこの道に行って正解だと言ったやつは。

いや、ある意味正解か。

「…あぁ、わかった、ん、またじゃあ後で」

ピッと電話を切る音がしたあと

土方がこっちの方向へ歩こうと振り向いた瞬間

俺と目が合って。

ゆっくりとスローモーションのように
切れ目で綺麗な目がまるで死んだ奴が目の前にいるような

そんな顔で俺を見ていて。

「よ、よろ、ずや」

「…よぅ」

「っ、いつから、そこにいやがった」

「…さぁ?」

「全部、聞いたのか、」

全部聞いてはいなかったが

核心である部分の話は聞いた。

だから

「あぁ、聞いたぜ?お前何、ホモなの?」

「っ、…」

「はっ、否定しねぇのかよ」

土方はタバコを噛みしめて苦そうな顔をしながら

「否定したところで…てめぇは聞いてたんだろう」

「……あぁ」

俺が肯定した瞬間、土方は吸っていたタバコを携帯灰皿に押さえつけて

俺のほうを瞳孔を開ききった目で

睨み付けていた。
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