*短編*
□それは、秘密の誓い
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** 清麿side **
ファウードとの戦いが終わってから、ずっと寝てるか食ってるかの生活をしていたせいで、体力が落ちたのだろうか。
久し振りの学校は、いつもより酷く疲れた気がする。
早く寝転がりたくて、制服を着替えようと襟元に手をかけた瞬間。
「きーよーまーろー!!!」
「ぉぅあっ!?」
――ゴチンッ!!!
勢い良く突進されたお陰で、思い切り転んで壁に頭をぶつけてしまった。
「イテ…」
「き、清麿!?スマヌ、すまぬのだ清麿!!!痛いのか!?大丈夫か!?」
身体の上で今にも泣き出しそうなガッシュを見て、軽く嘆息する。
「大丈夫だって、んな顔すんな」
優しく頭を撫でると、ガッシュはその小さな身体で清麿を必死に抱き締めてきた。
「清麿の『大丈夫』は信じられないのだ!!」
――また始まった……
最近、ガッシュはずっとこんな調子だ。
まぁ、大丈夫とか言って死にかけた俺が悪いんだけど。
「清麿はウソツキだから、心配し過ぎるくらいで丁度イイのだ」
「悪かったって言ってるだろー……」
大きく嘆息すると、ガッシュがキッと顔を上げた。
この瞳は、明らかに怒っている。
「清麿は分かってないのだ!!!私があの時、どんなに……どんなに………ッ」
その金色の双眸からボロボロ零れる涙を見て、胸に鋭い痛みが走った。
「泣くなよ…俺はココにいるだろ?」
「うーッ……きよまろは…っく……ウソツキなのだーッ!!」
わぁぁん、と本格的に泣き出したガッシュを抱き締めて、落ち着かせようと優しく背中を撫でる。
『ガッシュ、これから俺の身体に何が起ころうと、絶対に俺を振り返るな』
絶対に負けられない戦いだった。
だけど勝てそうになかったから。
俺一人の命ですむなら、安いもんだと思ってしまったんだ。
そんな事になったら、この優しい魔物が、どれだけ傷付くか分かっていたくせに。
――そうだ、分かっていた。
だけど、そうするしかなくて。
それ以外の道が、自分には見出だせなくて。
「ゴメン、ゴメンな、ガッシュ……」
――いつまでも前を、前だけを見て進んで欲しいと思っているのに。
その金色の髪も瞳も、慈愛に満ちた心も。
光溢れた世界が、お前には似合ってるから。
それなのに。
俺なんかのせいで、お前を傷付けた。
優しい優しい、その心を。
その輝く瞳に、影を作ってしまったのは俺。
「………ゴメンな」
「っく……清麿の、大馬鹿者……」
「うん、ゴメンな?」
ようやく顔を上げたガッシュに、ふわりと微笑ってみせる。
「もう…もう二度と、嘘などついてはならぬのだぞ!?」
涙で濡れる瞳の、有無を言わさぬその強さ。
「分かってるよ」
「絶対!!絶対に、約束だからな!!!」
「あぁ、約束だ」
差し出された小さな小指に、己のソレを絡める。
ようやく満足げにガッシュが微笑んだ瞬間、眩しさに目を細めた。
闇の中にいた俺を。
闇から抜け出そうと足掻く事すら諦めていた俺を。
その強烈な光で、『此処』まで引き上げてくれたのはガッシュ。
俺を救ってくれた。
人の暖かさを、
優しさを教えてくれた。
たくさん、数え上げればキリがない程たくさんのものを、ガッシュは俺にくれたのに。
俺がガッシュのために出来る事は、たった一つしかない。
『ガッシュを王にする事』
だったらその一つだけは、死んでも叶えてやりたかったんだ。
一度は諦めた『パートナー』の役を、もう一度俺が担えるのならば。
絶対に、今度こそ。
俺がお前を、王にしてやる。
END