*episode.over*
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episode.01
今日も平和な魔界の真ん中、立派なお城の最上階で、金髪の青年は机に突っ伏していた。
「ぬぅぅ…王様なんて…」
『ガッシュ、やさしい王様になれ』
『どんな状況でも、絶対に諦めるな』
『一歩ずつ、前へ進め』
いつも私の数歩前で、強く優しく声をかけてくれていたパートナー。
幼い頃の自分にはとても大きく見えていたあの背中は、私の非力のせいでいつも傷だらけだった。
――今ならば。
清麿に傷ひとつ、つけさせやしないのに。
マントの使い方も完璧になったし、ゼオンに習ってなんとか瞬間移動も出来るようになった。
小さかった身体も、あの頃の清麿より遥かに大きくなった。
(しかし、清麿も大きくなっているかもしれぬのぅ…)
私はいつか、追い越せるのだろうか?
あの、光り輝く存在を。
「清麿……」
いつもの様に山積みにされた書類に埋もれながら、ガッシュが大きく嘆息した瞬間。
「ガッシュ、入るぞ」
ノックも無く開けられたドアの前には、新たな書類を持ったゼオンの姿。
「う、あ、これは…その、」
慌てて背筋を伸ばし、今更無駄だと分かりつつも一応書類の束を机に広げてみるが、時既に遅し。
「…貴様、サボるなとあれ程言った筈だが」
紫電の瞳が吊り上がり、絹の様な銀髪がゆらりと舞う。
「ち、違うのだ兄上、これは…ッ!!」
「ザケルッ!!!!」
「ヌォォォォォッ!!!!!」