白王子と黒姫

□Alive
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「危ないっ!」

それは一瞬の出来事だった

「モヤシ…っ?」

自分に覆いかぶさるようにしてきたアレンの身体を
アクマの腕が貫いている

(何が起きた…?)

彼の身体から自分の腕をゆっくりと抜き取ると
アクマはその血を舐め上げた
殺すことへの快楽が高まるのだろうか
優越感に浸るその横顔には、虫唾が走るような嫌悪感を覚える

「怪我は…ないですか…?」

その声に、慌てて抱き起こそうと触れた手に
生暖かい感触
じっとりと塗れた手は、赤く染まっていた

「バカか!俺が怪我なんかしてるはずねぇだろうが!」

悔しさのあまり怒鳴りつける、にもかかわらず
アレンはユウの腕の中で満足気に微笑んだ

「よかった…キミを…守れ…て…」

そういって、自分の頬に伸ばされた手は
頬にたどり着いた瞬間、触れた指先で血の跡を残し
儚くすべり落ちていった

「おい…モヤシ…?」

閉じられた瞳、滲んでいく赤

「おい!返事しやがれ!」

怒鳴りつけても閉ざされたままの瞳
考えたくもない事実が脳裏を過ぎる

『死』

頭の中が真っ白になっていくような
否、真っ黒になっていくような…
そんな感覚に捕らわれていく

「死んだ…殺してやった…!エクソシストを!!」

恍惚とした様子のアクマの声が、とても遠くで聞こえているようだった
それはとても遠くに、遠くに感じたのに
たまらなく耳障りで、今すぐにでも消し去らねばならない
ユウは静かにそう思った
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