白王子と黒姫

□アイノカタチ
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 マナ…マナ…
どうして?どうしてマナはいないの

──それは死んでしまったから

そんなこと本当はわかってる
だけど、僕にはマナしかいなかったのに
ずっと側にいてくれると思ってたのに…


『俺、あそこ嫌いなんだよ!』

目を覚ませば師匠はいなくて

師匠?どこにいったんです?

修行は辛かったけど、怖い思いもしたけど
マナを失った僕には、貴方しかいなかったのに
側においていてくれると思ったのに…


当たり前にあるものなんて存在しねぇんだよ…バカ弟子が…


そうだ、みんな消えていってしまう
手にしたものは、指の隙間から
サラサラと零れ落ちていく

もう何も、失いたくなんかないのに…



【アイノカタチ】



 「いやだ!行かないでっ!!」

飛び起きれば、自室のベッドの上
身体中に汗をかき、鼓動は早鐘のようだ

「夢…か…」

呼吸を整えようとすると気づく、身体の震え
俯けば、額から汗が伝う

振り払うように見上げれば
暗闇に吸い込まれてしまいそうなほど
果てしなく高い天井
恐ろしくなって目を閉じる

一人の夜が、こんなにも怖いと感じたのは
久しぶりのことだった

浴場で汗を流し、冷えきって震える体を温める

そうして震えも、額から流れる冷や汗も
納まったというのに、部屋に戻れば
キン…と耳が鳴るほどの静けさ

いてもたってもいられずに
アレンは部屋を飛び出した

行き先など決めていたわけではない

けれど、彼の足は
一直線に『その場所』を目指していた
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