白王子と黒姫

□Radiant Princess
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 幸せでいたかった
 物語の中でくらい


 現実はいつだって、想像以上に過酷なのだ

 御伽話の中にくらい
 ハッピーエンドを望んだっていいじゃないか

 作り話の中にくらい
 希望を見つけたっていいじゃないか




『Radiant Princess』




「こんなとこで何してんだよ」

 あまりに予想外の声に、アレンは驚いて
俯き加減だった顔を上げた

「…まさかこんな場所でキミに声をかけられるとは思いませんでしたよ」

怪訝そうな顔でそう言えば、相手からは
相変わらずの舌打ちが返ってくる

ここは図書室

この二人が遭遇するには、なんとも不自然な気さえする
そんな場所

「監視はどうした」

場所を弁え、ユウは少しだけアレンに近付くと
小声で続けた

「その監視が、向こうで調べ物してるから、図書室から出れないんですよ」

そちらを指指しながら、アレンも小声で応えると
ユウは『ふぅん』と小さく応え目を逸しす

その表情が、だからこんな所にいるのか、と
語っているように見えた

「キミこそ、なんでこんな所に?」

静かに読書をしている時間があるならば
座禅でも組みに行きそうな彼こそ
この場は似つかわしくない

「報告書書きに来たんだよ」

「あぁ…」

なるほど、確かに報告書をまとめる時は
アレンもここへ来る

静かで、調べ物に適しているこの場所は
書類作製にはもってこいなのだ
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