紅の兎と白い子犬

□Book-man
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どれだけ愛をささやいても
いずれあなたは鳥のように羽ばたいていってしまう

ならばいっそ
『鳥籠』の中へ閉じ込めてしまおうか

永遠に消えない傷をつけてしまおうか



いつでも側にいてくれるのに
僕に愛を囁いてくれるのに

どうして?
なぜキミは
たまに、そんなに切なそうに笑うの…?

キミがそんな風に笑う時
僕とキミの間には
決まって、ガラスの壁が出来たような錯覚に陥るんだ…

長期任務から、ラビとブックマンが帰ってきたことを
誰かの噂話で聞いたから、今
僕は必死に教団内を走り回っている

広すぎる教団内の、ラビの部屋も、コムイさんのところも
食堂も、談話室も、図書室も
ラビの行きそうな所は全て探したのに
その姿を見つけることは出来なかった

外にいるのかもしれない、教団の回りにある
森の中に足を踏み入れた時、ずっと聞きたかったその声が
僕の耳に触れる

「…わかってるって」

「本当にわかっておるんじゃろうな?」

声のした方に向かい、声をかけようと覗き見ると
神妙な面持ちでブックマンと向き合うラビが見えた

とても声をかけれるようにない雰囲気に
僕は思わず木の影に隠れる
そう、盗み聞きなんかするつもりじゃなかったんだ…
なかったのに、聞きたくなんか、なかったのに…

「おぬしが必要以上の感情移入をするなら、ここから去らねばならなくなるぞ?」

え…?ブックマン、今なんて…?

「わかってるって言ってんだろじじぃ!俺らはたまたまこっちにいるだけ!
 戦争にのめり込むな、仲間だと思うなだろ!?」

「…わかっているならよい」

ブックマンが、ラビが、何を言っているのかがわからなかった
ドクドクと、鼓動が走り出していくのがわかる

報告を済ませてくると、ブックマンはラビをその場に残し
教団内部に戻っていった
残されたラビは、辛そうな表情で天を仰いでいる

「わかってるさ…ブックマンに心はいらねぇ…」

結局僕は、ラビに声をかけることができなかった
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