紅の兎と白い子犬
□しなやかな腕の祈り
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──強い人と思っていた
その腕はたくましく 天へ伸びていたから
ひとり生きる人だと
そう決めつけたその足は
いつか傷ついていた
【しなやかな腕の祈り】
任務からラビが帰って来たことを教えられ
アレンは彼の姿を探した
そう長い任務だったわけではないけれど
自分が側にいられない間に
自分が知らない間に
怪我はしていないだろうか
何事もなかっただろうか
そんな不安ばかりが心を揺らす
教団内を走るアレンの視界を
見知った小柄な人物が掠めた
ラビと任務に出ていたブックマンだ
「…その度感傷に浸りよって」
小さな彼の囁きに、アレンはかけようとした言葉を
慌てて飲み込む
「だからいつまでたっても未熟だと…」
小さくついた悪態が、だんだんと遠のいて聞こえなくなっていく
(任務で…何かあったのかな…)
アレンの中の不安は勢いを増して膨らむばかりだ