ミンナナカヨシ

□僕+僕=僕
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白い煙の中から、アレンのものと思われる咳払いだけが聞こえてくる

「アレ〜ン!大丈夫!?」

「あちゃ〜…あの箱ってなんの薬だかわからん危ないの、避けといた箱か…」

ジョニーもリーバーも、姿の見えないアレンを
煙の中に必死に探した

「…もぉ、いったいなんなんですか…?」

煙が晴れ、目を潤ませたアレンの姿が、徐々に見えてくる

「なんともないか、アレン」

リーバーも心配そうに声をかけると
アレンは目をこすりながらゆっくりと顔を上げた

「はい…ちょっと煙たかったけど、別に……っ!?」

「って…!?」

顔を上げた途端、目を見開いたアレンの
その視線を辿ったリーバーもまた、その目を見開くことになった

ジョニーも呆然としながら、言葉を零す

「アレンが…もう一人…?」

彼らの視線の先、煙の少し残るその場所に
まだ焦点の定まらぬ瞳で、前髪を書き上げる
髪の長いアレンが、たたずんでいた…


「な…コレ、なんの薬だったんだよ…」

「は、班長が知らないの俺がわからないっすよ〜…」

困り果てた科学班2人は
隣にいた、本物のアレン…であるはずの人物の
小さな異変にふと気づく

「…アレン、まだ煙が目に沁みるのか…?」

涙目のアレンは、その瞳のまま上目遣いにリーバーを見つめる

「リーバーさん…僕、どうなっちゃったんですか…?」

弱々しい声、いつもの、何事にも諦めが早く
逸早くその状態に適応できるアレンの反応とは
とても思い難い

「こ…これは…」

そんな様子のアレンに気を取られている内に
いつの間にやら、髪の長いアレンが
リーバーの目の前にまでやってきていた

「こっちが…偽者なんだよな…?」

「ひどいな、リーバーさん…偽者扱いはないでしょう…?」

睨むように、けれどどこか妖艶に目を細めた
髪の長いアレンは、口元に妖しげな笑みを浮かべる

「僕は正真正銘、本物のアレンですよ…?」

足元には、腰を抜かしたように
弱々しくしゃがみ込んでしまった
見た目は普段どおりのアレン

「ど、どうなっちまったんだこりゃ…」

これは疲れすぎた自分の、悪夢なのだと
自分に言い聞かせ、リーバーは現実逃避をしたい心境にかられていた…
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