白王子と黒姫

□無人の浜辺
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夕日に照らされた白い肌
潮風に遊ばれる長い髪
風が目にしみるのか、少し細めたその瞳は
憂いを含んでいるようでなやましい

「神田…」

思わずこぼれた言葉に気づいたユウと、視線が交差する

「なんだよ」

夕日のそれを差し引いても、アレンの頬が紅潮しているのがわかる
そんな彼に、少し首をかしげているユウは
本当に自分の見た目の美しさに気づいてはいないのだろう

「今すごく…キミを抱きしめたい…」

「はぁ!?」

あまりに素直に呟かれた言葉に、ユウは思わずその整った顔を
引きつらせた
かまわず、アレンはすっと歩み寄る

「だめ…ですか…?」

ユウの目の前にまで歩み寄ったアレンは、上目づかいにそうつぶやいた
いつものように、人の意見も聞かずに詰め寄ってくれば
罵声の一つも浴びせられると言うのに
こんな風に見つめられたのでは、言葉を返すこともできない

(ある意味…これも脅迫みたいなもんじゃねぇか…)

どんな出方をされても、彼には敵わないのだと
そんな事実、きっとユウは認めはしないのだろうけれど

交差していた視線を、ユウは無言でそらす
拒否の言葉はない
そう、それが彼の答え

「神田…大好ですよ…」

答えを受け取り、強く抱きしめる
少しでも人気があったならば、きっとこんな風にはさせてくれなかっただろう
大人しく自分の腕の中にいてくれるユウに
アレンの心は嬉しさで満たされていく
季節外れの無人の浜辺に、感謝しきりのアレンだった

<FIN>
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