白王子と黒姫
□If・・・
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そのまま少しの間、アレンは言葉の続きを口に出そうか
それともこのまま、何でもないとごまかしてしまおうかを
思想の中で戦わせていた。
導き出された結果は…
『ねぇ神田…もしも僕らのどちらかが、おとぎ話に出てくるような魔王だったら…』
『は…?』
あまりにも突拍子のない発言に、ユウは手に持っていた本を床に落としてしまう。
しかしアレンの真剣な口調に、ユウは静かに言葉の続きを待った。
『そしてどちらかが、それを倒さなきゃいけない勇者だったら…』
ゆっくりと、躊躇いがちに紡がれる言葉は
なかなか先へと進まない
話すことを決めてなお、アレンはこの話をすることを躊躇っているようだった
ひょいと起き上がると、胡坐をかいた姿勢で、ユウの方へと向きなおる。
『神田は…僕を殺せますか…?』
意を決したように紡がれた言葉は、ユウの瞳を大きく開かせた。
2人でいる時は、強気な表情を見せることの多いアレンが
憂いを含んだ眼差しでユウを捕らえている。
ユウは椅子から立ち上がると、アレンの斜め前に位置する場所に腰を降ろした。
アレンに背中を向ける形で座ったユウは、しばらくの間を置き、その口を開く。
『…殺す』
予想はしていたその言葉に、アレンは苦笑した。
『あはは…そうですよね…キミならそう言うと思いましたよ…』
きっとユウの性格ならば、もっと即答でそう答えられるのだろうと予想はしていたのに
だからこそ、この問いかけをすることを、少し躊躇ってしまったのだとわかっているのに
実際に耳にすると、それはやはりチクリと胸に突き刺さった
『僕には…無理かな…』
ユウの背中をふわりと抱きしめて、耳元にささやく。
甘く、どこか切ない声で…