白王子と黒姫

□If・・・
2ページ/4ページ

そのまま少しの間、アレンは言葉の続きを口に出そうか
それともこのまま、何でもないとごまかしてしまおうかを
思想の中で戦わせていた。
導き出された結果は…

『ねぇ神田…もしも僕らのどちらかが、おとぎ話に出てくるような魔王だったら…』

『は…?』

あまりにも突拍子のない発言に、ユウは手に持っていた本を床に落としてしまう。

しかしアレンの真剣な口調に、ユウは静かに言葉の続きを待った。

『そしてどちらかが、それを倒さなきゃいけない勇者だったら…』

ゆっくりと、躊躇いがちに紡がれる言葉は
なかなか先へと進まない
話すことを決めてなお、アレンはこの話をすることを躊躇っているようだった
ひょいと起き上がると、胡坐をかいた姿勢で、ユウの方へと向きなおる。

『神田は…僕を殺せますか…?』

意を決したように紡がれた言葉は、ユウの瞳を大きく開かせた。
2人でいる時は、強気な表情を見せることの多いアレンが
憂いを含んだ眼差しでユウを捕らえている。

ユウは椅子から立ち上がると、アレンの斜め前に位置する場所に腰を降ろした。

アレンに背中を向ける形で座ったユウは、しばらくの間を置き、その口を開く。

『…殺す』

予想はしていたその言葉に、アレンは苦笑した。

『あはは…そうですよね…キミならそう言うと思いましたよ…』

きっとユウの性格ならば、もっと即答でそう答えられるのだろうと予想はしていたのに
だからこそ、この問いかけをすることを、少し躊躇ってしまったのだとわかっているのに
実際に耳にすると、それはやはりチクリと胸に突き刺さった

『僕には…無理かな…』

ユウの背中をふわりと抱きしめて、耳元にささやく。
甘く、どこか切ない声で…
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ