白王子と黒姫

□バレンタインストーリー
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 部屋にその包みを置き、改めて食堂に向かうと
さらに、両手に抱えきれないほどの包みをもらうことになったのには
さすがのアレンも、内心には苦笑を浮かべていた

しかしそこは英国紳士
さわやかな笑顔を作り、まごころを届けてくれた女性達に
悲しい思いなどは絶対にさせない

一方、そんな彼とは少し離れた食堂の一角
まるで身にかかる火の粉を振り払うように
アレンとはあまりに対照的な対応を見せていたのは
言うまでもないがこの人物

「…んな甘ったるいもん食えねぇっつてんだろうが…!」

いつもの蕎麦を、随分とイライラしながら食べたであろう彼もまた
沢山の女性に囲まれていた

それでも、と詰め寄る女性達に
ユウはかなりご立腹の様子である

「どけ…」

六幻を抜かずに耐えているのは、彼なりの礼儀であろうか
苛立ちのオーラを放ちながら、食べ終えた後片付けに立ち上がる
そこでようやく、自分以外にできている人だかりに気づく
そしてその中心にいる人物の存在にも

「あ、神田、もう食べ終わったんですか?」

「…だからなんだ」

ユウに気づき、声をかけてきた彼に
あからさまに不機嫌な態度をしめす

「あ〜…僕これからなんですよ、ちょっと待っててくれま…」

「テメェはその甘ったるいもんでも食っとけ!」

アレンの言葉を遮って、苛立ちをぶつけるユウに
思わず苦笑を浮かばせる

(私服でいたな…今日は任務ないんだね…)

アレンは心の中でそうつぶやくと
回りを取り囲む女性に、礼儀をはらって食事についた
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