白王子と黒姫

□Alive
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「…黙れ」

六幻がボゥ…と妖しく光を増す

「テメェは…キエロ…」

全身全霊、まさにその言葉が当てはまるほどに
全ての力がそこに集中していくのが目に見えるようだった

集められた剣気は、まるで行き場をなくしているかのように
六幻から溢れ、暴れている

静かに振れば、まるで竜巻でも起きたかのように風がゆれ
地面にその傷跡を刻んだ

「な…」

只ならぬ気配に、勝てないと判断したのであろう
撤退を試みるアクマだったが
もちろんそれを許しはしない

言葉はいらない
唱えずとも、剣気は思いのままに動いた

憎悪の瞳でアクマを捕らえた次の瞬間
そこにあった『モノ』は、跡形もなく消えていた

溢れかえった剣気は、それでも足りぬと
疾風を起し続けた

大地を切り裂き、木々をなぎ倒す
いつしかユウの周りには、小さな荒野ができていた

全てを失った乾ききった大地
ユウの心そのものを映し出すかのように…

光の宿らぬ瞳で
麻痺をしているかのように感覚の戻らぬ足で
横たわるアレンの傍らまでくると
ユウは崩れ落ちるように座った

「何…してやがんだよ…」

血の気の引いた顔が、月夜に青白く照らされると
まるでそれは蝋人形のようだった

頬に触れれば、あまりに冷たい

「いつも…いつも…一方的にぶつけていきやがって…!」

小さく口にする思いは、最早届かぬ思いは
後悔の念を残して、虚しく空(くう)をきる

「おいモヤシ!」

グッタリとうなだれる身体を無理やりに抱き起こす
脱力した体の重みの分だけ、ユウの心に闇を落とした
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