白王子と黒姫
□愛情表現@
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長い廊下をひたすらに歩く
どこに向かうつもりだったのか、よく覚えていない
部屋に戻る気にもなれず、座禅を組みに行ってみても
とても精神統一などできそうな気はしなかった
「…田、神田ったら!」
突然、背後から呼び止められ彼はハッと我に返る
「もう!ずっと呼んでたのに…」
後ろから小走りに近づいてきたのは
自分が教団に来た頃からの顔馴染み、リナリーだった
神田の数少ない『友人』と呼べる人間の一人である
「アレン君とケンカでもしたの?」
顔を覗き込むように問われると、神田の目がキっと釣りあがる
「あいつが余計なこと言わせようとするからいけねぇんだよ!」
「…図星だったのね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
口を貝のようにしっかりと噤み
くるりと背中を向けてしまった神田に
リナリーは思わず苦笑した
「大方、好きだって言ってほしいなんて言われたんでしょ」
神田は答えない
代わりに、通路に向かってリナリーに背を向けていたその身を
手すりに両肘を乗せ、預けることで
彼女に横顔を見せる体勢に向き直る
口下手な神田の行動に
リナリーは、彼に話をする意思があることを察した
「どうして言ってあげないの?一言言ってあげたらきっと安心するんじゃないかな」
彼の隣にならび、同じように手すりに両手を乗せた
「…その場しのぎの安心なんかに、どんだけの価値があんだよ」
「ん〜…そうだけど…」