白王子と黒姫

□愛情表現A
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派手な騒ぎを起してみたり
回りを大幅に巻き込んだり
時には回りにも多大な被害を被る時があるが
どうせ一時的なものと、誰もが受け流し傾向にある

そんな日常的なケンカの時はいつだって
強気の表情を崩さないアレンが
こんな風に情けないことを言うのは
とても珍しいことだった

「なぁアレン、こないだお前達がケンカした時の事覚えてっか?」

子供を宥めるように、アレンの頭をポンポンと撫でながら
ラビが囁く

普段ならば、子供扱いをするなと怒り出すアレンも
衰弱した心が優しさを求めるのか
まるで子犬がそうされているかのように
涙に濡れた瞳を、心地よさそうに細めた

「この間って…ラビと任務に出た時のですか…?」

「そうそう」

その時も、何が原因でケンカになったのかなど
思い出せないほどくだらない理由だった気がすると
アレンは、その日の記憶を探っていく

「アレンはさ、あん時すぐ行っちまったから知るわけねぇんだけど…」

『あの時』
そう、あれは任務に出る直前で
つまらないことで言い合いになって
これからしばらく任務で会えなくなるというのに
出掛けにろくに挨拶も交わさずに
アレンは彼に背を向け、さっさと地下へ降りてしまった覚えがあった

「あの後ユウが俺にさ…」

ラビの記憶の中には、あの日の神田の言葉
声、その表情に至るまで
鮮明に残り、思い出すことで
今、正確にその場面が彼の脳裏に映し出されている
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