白王子と黒姫
□Radiant Princess
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「で?」
「はい?」
視線を、アレンの持つ本に落とすと
何を聞かれたのかわからないと言った表情のアレンに
ユウは再び舌打ちをぶつける
「…辛気臭ぇ顔してたじゃねぇか」
ユウの言葉に、改めて自分の手にしている本を見つめ
アレンは『あぁ…』と苦笑を浮かべた
「暇だったんで、御伽話でも読もうかと思って…」
本を、ユウに差し出すようにして
アレンは視線を落とす
本は、英訳された日本の御伽話のようだった
「悲しい…お話で…」
「は…?」
少し眉を寄せたユウに
自嘲的な笑みを浮かべながらアレンは続ける
「お姫様がね、月に帰っちゃうんです、お爺さんとお婆さんにさよならして」
「…」
聞いた事のある物語だった
ユウは、怪訝そうな表情を解いて
彼の言葉の続きを待つ
「長生きして下さいって、お姫様が残した不老不死の薬、燃やしちゃうんです…彼女のいない世界に、長く生きても仕方ないって…」
俯いたアレンは、涙こそ浮かべてないものの
今にも泣いてしまいそうにすら見えた
その口許には、苦笑と言う名の
笑みを浮かべているというのに
「…何も、こんな悲しい話、作らなくてもいいのにね…そう思いません?」