紅の兎と白い子犬

□Book-man
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 その日の夕食時、僕は食堂で
昼間に見たのは別人ではと
錯覚するほどいつも通りのラビに出会う

「アレ〜ン!会いたかったさぁ!」

調子のいい声と共に、こんなにも人気の多い食堂で
堂々と抱きついてくるラビを
僕は思わずいつもの調子で振り払った

「ラビ!こんなとこで何するんですか!」

「久々に会ったのにつれねぇの、んじゃ続きはまた後だなっ」

ニカっと、明るい笑いを見せ
くしゃくしゃと僕の頭をなでるラビは
いつもと少しも変わらない
まるで、あれは僕の見た悪い夢なのではないかと
そう思いたくなるくらい

夕食を済ませ、浴場から帰り、自室で休息をとる
教団の夜はとても静かだ
コムイさんが、妙な発明さえしなければ

コンコン

ノックの音に、僕は思わずベッドから飛び起きる
ドアの向こうに誰がいるかなど、すぐに察しがついた

「ラビ!」

確認もせずにドアを開けたけれど、僕の予想は当たっていた

「アレン、無用心さ」

優しく微笑みを浮かべながら、ラビは僕の頭をなでる
子供扱いをされるのは大嫌いだけれど
ラビにそうされると、なぜかとても心が落ち着いた

扉を閉めて、その胸に額を当てる
ラビは僕を暖かく抱きしめてくれた

「おかえりなさい…ラビ」

「ただいま…アレン」
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