紅の兎と白い子犬

□包み込むように
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「買いすぎちゃったらしいですよ?おいしそうですし…もらってきました」

食べ物のことになると、アレンは本当に
可愛らしい笑顔を見せる
そんな笑顔は幸せそうで何よりなのだが
それの差出人が、ラビはどうしても気にかかる

「…それ、大丈夫なんさ…?」

「え?」

こんなことをいうのはなんだが
彼が何かを勧めてくる時には
いつだって裏がある

任務の後、疲れているだろうからと
入浴を促された時には
新しい入浴剤の実験台にされ

珍しくコーヒーを淹れたと差し出されれば
薬物が混入していたりと
とにかくそんなことが多すぎる

日ごろの行いのせいで、彼の好意は
なかなか素直に受けることができないのだ

「大丈夫ですよ〜、ダメにしたらもったいないですし…」

「アレン…食べたいだけだろ…」

心配するラビをよそに
アレンはそのケーキを食べ始める
1口、2口…
特に変化は見られない

「ホラ、大丈夫じゃないですか」

口の端にクリームをつけながら
アレンが得意げに笑った

そんな笑顔が、素直に可愛いと思う

(俺、結構重症かも…)

小さく苦笑を浮かべ、機嫌よくケーキを口に運ぶアレンを見つめる

ケーキがほぼなくなりかけた頃
ラビも何事もなくてよかったと
そう思った矢先の出来事

「っ!?」

アレンの心臓が、一回ドクン!と大きく跳ねた

「アレン!?」

驚いて、思わず手を伸ばしたラビの目の前で
アレンの身体は…
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