赤い兎と黒いネコ
□泉のある街
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人間の皮をかぶり、紛れ込むアクマに
聞き込み調査は困難を極めた
見なれない人間がこの街に来ていないかときいてみても
皆首を横に振るばかり
実際、この街に古くから住んでいる人間がアクマである可能性だってある
やはり、その姿を現すまで待つしかないのか…
2人がそう思い始めた頃
街はずれに美しい泉を見つけた
「すげぇ…なんか神秘的さ…」
泉の中心から、水が湧き上がってくる
木々の間から降り注ぐ光が、その波紋に注ぎ込み
キラキラと水面を輝かせていた
自然が作り上げた芸術に
普段は師の語る芸術にも耳を傾けないユウも
視線を釘付けにされていた
「こういうとこ、守りたいよな…」
珍しく、心奪われている様子のユウに
ラビは囁きかける
その声に我に返ると、ユウは慌てていつもの仏頂面を作る
しかし、再びその輝く泉を見つめると『そうだな』と小さく呟いた
「平和になったらここでデートでもする?」
ひょいとユウの肩に腕を回し、ニカっと笑って見せるが
その刹那、六幻が眼前に迫ったのは言うまでもない
「寝言は寝て言え!」
クルリと踵を返したユウの背中に、ラビは小さなため息をついた
「つれねぇの…」
クスリと苦笑を浮かべると、少し後からその背中を追う
今日は宿に戻り、アクマの出現を待つことにした