赤い兎と黒いネコ

□はちみつKISS
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栄養豊富、喉にいい
そんなハチミツの、意外な側面を
この時のラビは知る由もない

物知りなはずのブックマンも
そんな効果がハチミツにあるなどと
教えたことはもちろんなかった

ソレを教えたのは
意外と言えば意外な
それでいて、らしいといえばらしい
そんな人物

食器を片付けにいくと、よく知った人物に鉢合わせる

「よぉ、アレン」

「あ、こんにちはラビ」

隣に並ぶと、甘い香りが鼻をくすぐったのか
アレンは、ラビの持つマグカップに視線を落とす

「ハチミツ飲んでたんです?」

「ん?俺じゃなくてユウだけどな」

「へぇ…」

ニヤリとされて、ラビは思わず首を傾げた

「…なんさ」

「え?そういう意味で飲ませたんじゃないんです?」

アレンの言葉に、ラビは傾けた首をさらに傾けた
会話が繋がらない

「いや、あいつ珍しく風邪引いててさ、喉痛そうだったし…」

「あぁ…なんだ、そっちですか」

少しつまらなそうにアレンがつぶやく
ラビには、アレンが何を言いたいのかがまるでわからなかった

「ラビ、聞いたことありません?ハチミツって、媚薬になるそうですよ?」

「はいっ!?」

あまりに意外な発想に、ラビは思わず
マグカップを落としてしまいそうになった

「だめですね〜ブックマンJr.ともあろう人が、そのくらいの知識ないとっ」

クスリと笑われ、なんだか少し悔しい

(んな知識…裏歴史には関係ないんさ!)

心の中で反論し、はたと我に返る
では今、ユウは…?

味見をした感じ、あまり甘くなさそうだったので
わりと多めに溶かしてしまった覚えがある
もしも、そんな効果があるのだとしたら…

「うん、まぁ…じゃ、そういうことで」

言葉も途切れがちに、ラビはアレンをその場に残し
大慌てでユウの部屋に戻ったのだった
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