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□光を遮る雲
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久しぶりの、雲1つない青い空だ。

勿論、仕事中そんな空だった時もあっただろう。でも、赤黒いモノを見た後の殺気立った自分の心を通しては、全ての空が黒く見えていた。

そんな空も嫌いじゃないけど。


俺の立場はあくまで中立者だ。客観的に物事を見れなくなっては、それこそブックマン失格だ。
彼処にあれ以上こもっていたらきっとそうなっていただろう。いや、もうそうなりかけていたのだ。

ルル=ベルにあんなキツい事言われなきゃ、もうとっくに俺は俺じゃなくなっていた。
それだけはわかる。

俺は今、教団本部がおかれていた城に向かっている。ルルが派手にコワしたおかげで、中央庁が100年も使っていた城の廃棄を決めたらしい。
別に大して期待はしていない。

何か手掛かりが掴めるとか思っていない。


ただ何もしていないのが嫌になっただけ。
ゆっくり歩いているから随分と時間がかかってしまう。でもいい。歩いている内に、少しでも自分の狂気が流れてしまえばいいさ。

それからどれだけ歩いただろうか。何故だか、疲労感と空腹感が感じられない。


実はそんなに歩いていないのだろうか。それとも、単に疲れ過ぎただけだろうか。そもそも、俺という存在がこの世に在ったのだろうか。


そんな事まで考えてしまうのだから、歩き過ぎたのだろう。もう痛いという感覚さえ判らなくなってしまった。



それでも前に進んだ。


やがて、あの高い崖が見えた。
辺りはだいぶ薄暗くなっていたが、その上には、城が無かった。

慌てて、その崖を囲んでいる森まで近寄った。


何度見上げても、城は跡形もなく消えていた。




「何で...」


その時。

森から微かに音がした。
風や動物が起こしている音ではなく、人間が起こした音。


とっさに身構える。
別に、殺気が感じられるとか、嫌な予感がするわけでもない。癖が抜けないだけだ。


その音の主は、闇に包まれた木々の影からゆっくりと姿を現す。


「……っ」

「!……」


それは神田ユウだった。
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