◆interest family◆
□汝の名
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神は崇められるものであり、罪は罰せられるもの、悪は憎むものである。
人類が生まれてから感覚の底にあった、常に正しく識別されるべきもの。
誰が底に植え付けたのだろう。
何故人を殺すのは悪いのか。と言って本当に人を殺す者は愚かであるが、別に問うぐらいならいいだろう。
殺したら、その人の家族や仲間が悲しむからダメ。
じゃあ、それらがいない人なら殺してもいいのか。
そもそも悲しみという感情は曖昧である。悲しみを引きずっては生きていけないし、自分が悲しくとも心が追いついて来なければ涙さえでない。
カナシミは一体何の為にあるのだろう。
「失礼します。室長何か用でしょうか?」
「やあやあ、リーバー君。いつもの君らしくないね、少し堅いんじゃないかな。」
リーバーは後ろ手にドアを閉めると、つめていた息を吐いた。
此処だけは、絶対に他の人間に話を聞かれる事はない。
「……仕方ないじゃないっすか。中央庁の方針が変わって、最近は室長とオレなんかにも監視がついているんですから。」
「「オレなんか…」って自分をそんな風に過小評価しちゃダメだよ。君はよくやってくれてるんだから。」
「…有難迷惑ですよ。それで、用件は?」
コムイはいつものような笑みを浮かべながら、正面に置かれているソファーに座るよう示した。
「…一応念を押して、言いたい事のほとんどはその手紙に書いといたから……読んでくれ。」
低く発せられた声に何かを悟ったのか、リーバーは手紙を手に取った。
「君ももう班長じゃないのに、大変だね。」
「ジョニーがまだまだ仕切れないようなんで。シジとか他の皆もいるし、大丈夫だと思ったんすけど…。」
「僕は、君に班長を任せて良かったと思ってるよ。」
軽く手紙に目を通していた補佐官は、その上司の言葉に顔を上げた。
「…オレに、これをやれと。」
「リーバー君なら心配しなくていいからね。それに、これも補佐官の仕事じゃないかな。」
短いため息をついて彼は立ち上がった。
「補佐官の仕事には見えないけど、行きますよ。」
「うん。その後はバクちゃんの所辺りにでも隠れてくれたらいいから。」
「わかりました。」
リーバーは部屋を出ようとしたが、再び振り返りコムイに言った。
「オレもジョニーに任せた事、後悔なんかしてません。」
室長は笑っていた。