◆interest family◆

□汝の名
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そこは小さな牢だった。
その階にはその部屋以外に空間さえない。
黒い床に黒い壁は他の造りとなんら変わりないが、頭上に光を取り入れるアクリル板を通した小さな窓がある。
ここは地下で、そもそもこの建物自体、太陽の下には建っていない。だが、窓からは神々しい光が差し込んでいるのだ。

彼はそこにいれられた。

「ぅ…ぅあ……」

苦しんだ。
悩んだ。
悲しんだ。
嘆いた。
諦めた。
呻いた。


光は闇を殺していく。

彼は闇に染まりたかった。余計なことを考えないように。

自分が犯した過ちに気づいても、もう遅かった。

彼は闇に依存していた。心の隙間さえも埋めるように。

だから殺される。闇を。何かを埋める為のものでなく、一部にする為に。







「なあ、瑠矩にああいう事をやらせて何の意味があるんだよ。」

「仲間にする為、ですヨ。」

「えぇ〜、ボクはやだなぁ。お人形にするならいいけどー。」

3年前からちっとも容姿が変わってない少女は、ソファーで横になっている男の上に飛び乗った。


「ねぇ、ティッキーはどう思う?」

「…何が?」


「瑠矩の事だよ。話、聞いてたでしょ?」
男は表情を変えずゆっくり体を起こし、めんどくさそうに口を開いた。


「…仲間だろーがなかろーが、敵に味方しない限り利用してやればいいだろ。」

「……」

扉に体を預けるように立っていた青年は軽く男を睨んだ。



「…おや、今日は随分速かったですネ。」
千年伯爵は何事もなかったかのように背後の扉に声をかける。
扉が外側に開き、支えを失ったデビットが床に転がった。

「いって…」

「邪魔。」

男は、デビットを一瞥すると一歩部屋の中に入った。

「…終わりました。」

彼はあの牢に入る前と違い肌が白く、黒いキャスケットで隠してはいるが髪は昔のような赤髪だ。


「調子はどうですカ?何か必要なら用意させますヨ。」

「…いえ、結構です。ノアじゃない俺を置いてもらっているだけで有り難いですから。」

その一言で彼が今までの話を聞いていた事がわかった。

「瑠矩、お前…」

デビットは立ち上がり彼の腕を掴んだ。彼は、無表情のままボソッと言う。

「…ジャスデロが心配してる。行ってやれ。」

腕を乱暴に振り払うと、彼はこの部屋からしか行けない自室に戻るため奥の真ん中の扉に手をかけた。
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