◆interest family◆
□空虚に眠るヒトガタ
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アレンは彼の表情とは違い、ココロの奥底に奇妙な想いを抱えていた。その隣に立つリンクはそんな彼に気を払いながらも目の前の家を見て、彼を待っていた。
彼らは簡素な造りの村外れにある小さな家の前にいた。幻想かもしれない彼を追って。
『Roy Jeaks…ってあの人の、名前ですか?』
『…あんたら、知り合いなんじゃないの?』
『知り合い…です。ただ、彼は偽名を使う事も多いので、おそらくその名前も彼の偽名かと。彼の住んでいる場所を教えて頂けないでしょうか。』
「……ティム?」
「どうかしましたか、ウォーカー。」
「いや、なんかティムの様子がおかしくて…」
今ではアレンの頭程の大きさになったそれは、いつにも増して暴れていた。背に斜めにかけているそれ専用の袋から、半分以上体がはみ出している。
『…はいよ。一応地図も書いたけど、村外れにある家はそこだけだからすぐわかるはずだ。』
『ありがとうございます。…そのロイ・ジークスって人、1人でそこに住んでるんですか?』
『いや、赤い髪の男と一緒だったよ。』
「…ティムを落ち着かせなさい。もし知らない人だったらどうするんですか。」
「……リンク、やっぱり信じてないんですね。」
珍しいため息をついて、彼はそれを袋から出した。
何処が信じられようか。こんなにも落ち着いている彼を見て、どう信じろと。そもそも、あの喫茶店の店主の言う事が嘘臭い。彼の幻想を強くしてしまうような事を言って…全くわけがわからない。
「ティム、どうしたんだよ…お前…ッッ?!」
凄い勢いでアレンがリンクの方に吹っ飛ばされて、彼の思考は強制的に遮断された。
「…!!っ……」
重なるようにして地面に転がる2人。
「ウォ…ウォーカー!!一体、何ですか!?」
「ティム、やめるんだ…!」
彼らを突き飛ばしたのはそのゴーレムだった。ティムは、袋から完全に解放された瞬間にアレンに頭突きをしたのだ。
そのまま、それは目の前の家のドアに激しく頭突きをぶつけている。
「やめなさい!」
「…ティム!!」
彼らは、ただそれを呆然と眺める事しかできなかった。
やがて、ドアは開いた。ティムがドアを壊したからではない。外側にドアが開いた。中の人間によって。すぐにティムは中へと飛び込んだ。
その瞬間、響く銃声。
倒れて込んでいる彼らからは、中の様子は見えない。急いで体を起こし家に近づく。近くの木の後ろから眺めていた影も同じ様に近づいた。
「何の用だ?」
誰に向けてかはわからない。
だが、その酷く響く重低音は1度聞いた者なら2度と忘れる事はない。
中から左手に銃を持ち、ティムキャンピーの羽を右手に掴んで現れた、その声の主。
彼を見てー
鴉だった男は、隣の彼に気を払えないほど驚いていた。そんな彼に気づかず、アレンはいつも通りにただ笑みを浮かべていた。