◆interest family◆

□偶話
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ーガンッと鈍い音が部屋に響いた。


ダンベルが暗黒物質でできた壁を強くへこませ、床に鈍い衝撃を与える。
それでも逃げ場のない気持ちは収まらず、部屋の唯一の照明である燭台をドアに投げつけた。途端に部屋が闇に包まれ、炎は燃え移る事もなくドアに吸収された。

感情が…荒立っている。

最近はそういう事が多かった。闇が体に定着していくにつれ、平常心ではいられくなった。
自我が、僅かに残っていた良心が、恐れているのだろうか。消えていく事を。
どうせ、俺はもう用済みだ。いつ殺されてもおかしくはない。家族の中に1人だけ異端の者がいたら排除するのは当然だ。自我なんかなくなっても…もうどうでもいいはずなのに。
なのに、何故恐れる?
ずっと昔に捨てたはずの生への執着心が今更戻ってきたのか?
…笑えるな。死に直面すると、人間ってのはなんとしてでも生きようとするらしい。


オレは、弱いから。
昔から内側では孤独と共にいた。自我が芽生え立ての自分が起てた誓い。でも、それは孤独しか知らなかったからだ。

本当の自分を作り上げてしまった時点で、知識を捨ててしまえば楽になれたのだろう。虚像の自分でも作り上げられた自分でも、自分なのだから。

後悔じゃない羨みだ。昔の自分の周りには、楽になれる術が手を伸ばさないだけで沢山あった。今の俺は、どんなに必死に闇でもがこうとも楽になる術なんか探すことができない。

いっそ、自分で死んでしまった方が無になれて楽かもしれない。でも、俺はヨワイ。

だから物にあたるなんて馬鹿な事でしか、自分を沈められないのだ。




無意味に疲れた体をベッドに横たえた。
目を閉じて闇の中で闇を作る。
俺はそうしてまた闇にオチテいく。

これが快楽であり、苦痛。
そうして生きていく事しかもうできない。
嫉妬
妬み
羨み

頭の中を巡っていく全ての感情。


怒りだけはなかった。
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